TANTOTEMPO Project: 2011年12月アーカイブ

R0012040.jpg【今年からPARIS PHOTOが開催されることになった新会場、Grand Palais】
11月9日から僕たちTANTOTEMPOスタッフはPARIS PHOTO 2011に行ってきました。PARIS PHOTOのレポートはすでに多くの人によりあちらこちらで書かれはじめているようですが、僕もこちらのブログとまた別の枠組みのコラムとに寄稿することにしていますので、こちらではあっさりと触れるに留めたいと思います。

僕自身が写真に関連してパリを訪問したのは3回目。2007年のTANTOTEMPOオープン前年、さらにTANTOTEMPO開設直後の2008年、この年は日本が特集された年だったわけですが、その2回に続いて3年ぶりの訪問となりました。前回の訪問は、パリはストライキが吹き荒れ、僕たちの帰国便が飛ばないという混乱に見舞われ滞在日程のほとんどをこの問題の解決に使ったため散々なパリ訪問でした。今回はあらゆる意味でさまざまに目的をもっての渡欧でしたので、ストで飛ばないような航空会社は避け少しゆとりのある日程を設定しての訪問でした。

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その訪問の大きなミッションの一つは、写真集や写真のZineなどをパリで調達する、というものでした。これは帰国直後の11月19日からTANTOTEMPOで開催した"WORLD INDIE PHOTO BOOK & ZINE COLLECTION"という写真集にフォーカスした企画に展示する写真集を集めるものです。PARIS PHOTO以外の写真イベントを訪問することも大きな目的でしたので、事前に調べていたさまざまなイベント訪問を実現してきました。特に、Offprint Parisという写真集、リトルプレス、Zineに多数の中小出版社や個人が参加するイベントでは本当にたくさんの写真集、ZIneを見ることができました。その熱気はPARIS PHOTO本体をしのぐのではないかというほどだったと思います。

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さて、"WORLD INDIE PHOTO BOOK & ZINE COLLECTION"ですが、6月にレビューサンタフェを取材訪問した際訪れたPHOTO-EYEというアメリカでも有数の写真ギャラリーに付属するBook StoreやIndie Photobook Libraryというこれら写真集の全世界に渡るデータベースを作成しようという試みで数多くの優れた写真集を目撃したことから企画したものです。写真集とはいえ、写真の見せ方や構成、装丁やデザインにおいて実にさまざまな工夫がなされており、いわゆる大手出版社によらない写真集の界隈がかなり階層の深いアートのコンテクストを持っているように見えた訳です。そこで、秋のパリ訪問にあわせて世界中から写真集を集めて、帰国直後に展覧会を構成できれば有意義な展示ができるのではないか、と考え計画をねってきたのです。

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"WORLD INDIE PHOTO BOOK & ZINE COLLECTION"では、アメリカは先述のPHOTO-EYE Book Storeから、欧州はOffprint Paris会場から任意に出版社や枠組みを設定して、また日本からはTANTOTEMPOにゆかりのある写真家や東京Photta-lot柿島貴志さんのセレクションを加えて、総数約80種類の写真集&Zineを展示しました。特にPHOTO-EYEはブックストアのMelanieディレクターが自ら写真集を直接セレクション、またOffprint会場でも枠組みそれぞれのおすすめ写真集の提案を受けての選抜となっており、これも展示が非常に面白い、と評判になったコレクションになった理由だと思います。

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【かなりしっかりした段ボール製のテーブルを設置】
企画の構想を立てた時点で一つの問題に突き当たりましたが、それが写真集をどのように展示するか、というものでした。しかし、ギャラリーによく来てくださる段ボールを使ったさまざまな商品開発を行う、自身も段ボールアートの可能性をさまざまに発信されている方にテーブル作成を依頼しました。このテーブルは壁に固定さえすれば相当の重さまで耐えるし、たたんでしまえば保存できますので非常に重宝しそうです。

結果的に、非常に面白い展示空間ができあがりました。写真集はそれぞれの枠組みごとに並べ、枠組みの紹介パネル、価格などとともに展示をしました。

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パリで出会ったいくつかの出版社、枠組みは非常に面白い写真集を作っています。写真集に留まらず自らリトルプレス、Zine屋と称してブランドを立ち上げている人も数多く見かけました。"WORLD INDIE PHOTO BOOK & ZINE COLLECTION"はまさにOffprint Paris会場のミニチュア版をTANTOTEMPOに設置したような形となりました。

内訳は、オランダをベースとするPolly's Picture Showという写真に関することなら何でもする、という写真プラットフォーム、スイスのリトルプレスKodoji Press、オランダ人だけれどブラジル在住の個人Zineレーベル4478Zineを立ち上げた写真家Erik、ロンドンのリトルプレスJane&Jeremy、そしてPHOTO-EYE Book StoreにTANTOTEMPO、Photta-lot
セレクションの日本のシリーズです。TANTOTEMPOが2月に開催する海外でも人気の硬派な写真誌ASPHALTも予告もかねて展示をしました。さらに、大阪のZine専門店Books DANTALIONも、オーナーディレクターの堺さんのセレクションで展覧会にご参加いただきました。

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さて、この展覧会中非常に面白い現象がみられました。来廊者の方々のギャラリー空間への滞在時間が非常に長いのです。写真集というものは、いわゆる写真展に飾られている写真とは全く違った興味を与えていることがわかります。アートの装置が一面的でも2次元でもない、装丁や本としての体裁の与え方など非常に多くのチェックポイントがあるからです。実際、何人かの来廊者の方は「適当な写真展を眺めるよりよほど面白い」「こんなに多様な写真集文化があるとは知らなかった」と非常に高く評価していただいたと思います。

【馬場先生の話に熱心に聞き入る窪山さん(手前)と堺さん】
12月3日、このイベントに関するトークショーを開催しました。甲南女子大学のメディア文化、写真論の馬場伸彦先生、Zineを専門に扱う書店Books DANTALIONの堺達朗さん、そして大阪の写真ギャラリーBLOOM GALLERYの窪山洋子さんを招いてのトークショーでは、まず馬場先生から写真集がいつ頃立ち上がり、どのような歴史を経て発達したのかを概説していただき、現在の写真集の存在意義について、また写真集という物質的構造そのものが触ってめくるものとしていわゆるデジタル写真集としてモニターで見る写真集構造とちがってパーソナルな体験をもたらすことを、DTPの登場による印刷に関する技術革新とからめて説明していただきました。続いてZineについて堺達朗さんにその発祥と考えられるいくつかのエピソードを話していただき、Zineがどうして注目され現在の形態と流通を持つに至ったかを説明していただきました。Zineは本質的に非常に安易にチープに作られていて、いわゆる写真集の品位とは全く異なる形式である訳ですが、デジタル時代にあってもこうしたチープさが維持されながら、一方では著名作家のZineの登場、イベントの興隆で本来チープであるはずのものが高額に取引される作品として流通する事情などを説明していただきました。さらに、海外や日本でのZineのイベントをスライドショーで紹介していただき世界中でのZine熱を紹介していただきました。続いて、写真ギャラリーの立場からすれば写真展という非常にフォーマルな構造があるなか、全国でも珍しいポートフォリオ展、Zine展などを相次いで開催し人気の展覧会に育てているBLOOM GALLERYの窪山さんに、そういったイベントを開催するきっかけや意図について話していただきました。ポートフォリオやZineには、限られた写真を選んで展示する写真展とは違って、より多くの作品を見ることができるため作家の世界観が見えやすい、という特徴がある、それが面白いとの説明がありました。参加者の多くは写真表現を学んでいる途上の方が多く、皆さんが熱心に聞き入っておられたいいトークショーだったと思います。

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【オランダの若い女性アーティスト集団にインタビューを申し込む】
今回の写真集展は、異なった国、地域から多くの写真集を集めたこと、またそれぞれの枠組みや出版社が独自の形式の写真集を送り出していること、また一冊一冊がアート作品のような面白い表情を見せている装丁やデザインそのものの多様性を見ることができた訳で、多くの方が大変楽しまれ非常に高く評価された展覧会となりました。また、参加していただいたアメリカやヨーロッパの枠組みそのものにもFacebookやホームページで取り上げてもらったため、彼ら自身やその周辺からも高い評価をもらうことができたように思います。

TANTOTEMPOには世界中の写真集を収集したそこそこ大きなライブラリーがありますが、今回の写真集はそれらとは全く異なる顔を持っているように感じられました。これらは写真から必然的に派生した写真集と、そもそも自己表現のツール、メディアとして難しいこと抜きに自然発生したZineと、明らかに出所が異なるようにも思えるし、馬場先生が「それらの区別には意味はない、結局のところは複製技術、印刷技術、編集のセンスが時代と組み合った結果でき上った文化なのだ」とのまとめの言葉に象徴される、アートの一部なのだと考えるしかないと思います。TANTOTEMPOでは今後もこのようなイベントの開催ができるよう、アメリカやパリで作った関係を維持しながら、より大きなイベントを模索したいと思います。

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