この写真展は若手の写真家にレビューを通して展示の機会をもっていただき、また来廊者の方々にも作品を飾る生活の楽しさを訴えようとTANTOTEMPO設立の2008年から毎年開催しているもので、今年も家具を設置しての展覧会となりました。



最近は展覧会の始まる前にその展覧会が成功するかどうか不安になり胃が痛くなることが多いのですが、「成功」の定義はともかく、終わってみれば来廊者数も反応や売り上げもそこそこ例年通りだったのではないかと安堵しています。今年のTANTOTEMPO pure展は海外から3写真家を招待して大作品のユーモラスな作品やコンセプトの明快な作品、展示の工夫をするなどいろいろな点で作品が社会に訴える仕組みを見せられたかと思います。参加した写真家また来廊いただいた皆さんからも例年以上に好評で、大変有意義な展覧会だったと思います。一方で、作品が大きくなる傾向があり、また高レベルになったために価格帯が例年より少し上昇したこともあり、昨今の経済的状況で売り上げが生まれるのか大変心配していましたが、どうやら杞憂に終わったようです。決してすばらしい成果とはいえませんが、近年の経済状況、作品のレベルなどからすれば上出来と言えるのではないかと思います。
それにしても今年の日本の若手写真家は、よく頑張ってくださった方とそうでない方とが成果の上ではっきりと分かれる結果となりました。いわゆる営業的なことを強いるのは僕たちギャラリーの立場からすればこころ苦しい訳ですが、自ら率先して作品を世に出したいと願いそれを行動で示す姿勢があった日本の写真家の3名はぎりぎりのところで結果を残せたのが良かったと思います。彼らとは展覧会が進むにつれ一体感が生じて、彼ら同士がつながっていくのを大変興味深く見ていました。ギャラリーにこられない外国勢の作品の解説を引き受けてくれるすばらしい姿勢の写真家もおられました。
最も売れたのは海外の一人と日本人の一人の各2イメージ延べ3作品ずつ。それぞれ作品力、アートや社会への参加の姿勢が他を一歩抜きん出ていたように思います。特に海外の写真家で一番人気だったDavid Schalliolさんの作品と日本人写真家の清家政人さんの作品について少し解説したいと思います。
Davidさんはアメリカの名門シカゴ大学の社会学部で準教のポジションにいる社会学者です。社会学での研究テーマが都市の境界線を読み取ることで、都市の辺縁に存在する孤立した建築物を都市の拡張と衰退の視点から眺め研究をしています。そのテーマがそのまま写真作品になっているのが今回の写真展で展示した風景写真なのです。イメージは非常に精緻で色彩が豊か、構図やライティングを捉える視点も完成度が高く、もちろん建築写真としてみてもうまい写真と言えます。来廊者の方の多くが彼の作品を最も理解しやすく欲しい作品、とたたえてくださったのが印象に残っています。展覧会後、一報を入れると大変喜んでくれました。
清家さんは展示6作品のうち特に2作品に注目が集まりました。写真はDavidさんとは正反対、どちらかというと日本的な心証風景かと思います。日本画の異時同画法という、一つの画面に時空の異なる絵を落とし込んでいくという手法を写真で実現できないかと考えて、複雑な工程を作品づくりに課しての参加となりました。その結果、注目されたいくつかの作品には複雑な構図からもたらされる美が醸し出されており、作品としての意図を表わすことに成功したのではないかと思います。清家さんはまた、東京からの参加でしたが、設置から撤収まで非常に高い意識での参加姿勢があり、ギャラリーとしてもその辺りの姿勢を非常に高く評価しています。あとは作品の精度を上げて、注目された2作品と同レベルのわかりやすい美しさを制作姿勢から加えていけばかなり質の高い作家活動が繰り広げられるのではないかと思います。
他の日本人写真家2人も頑張りました。イメージはまだまだ実験段階、まだ伝えきれない部分もあるのだろうと思います。しかし、今回の展覧会の中でより多くのことを学ばれたと思います。アートに携わることの大変さは何も売り上げばかりで語ってはいけないのですが、グループ展の他の参加者の作品が売れていく様子を横目でみることは非常に苦しい思いがあるものです。しかし、めげずに最後まで熱心に自分の作品を売り上げていたことが何より結果につながったと思います。作品については他者のこころに響かない限り評価される所に到達できないことは明らかですので、作品をより高い姿勢で制作し、ギャラリーや来廊者と真摯な態度で交流し、フィードバックに耳を傾ける姿勢を持つことが何よりも大切です。彼らにはこれからも頑張っていただきたいと率直にエールを送りたいと思います。
実績としては2週間の期間中、12作品が販売されました。多くの方が来廊くださり、またこの展覧会の趣旨に賛同くださってたくさんの応援をいただきましたことを感謝しております。この場を借りて厚くお礼申し上げます。
