Event: 2010年8月アーカイブ

herbie_0005.jpgⓒHERBIE YAMAGUCHI

ハービー・山口さんをメインの写真家、レビュアとして迎えた、写真と社会の関係性を問いかける写真グループ展、HEARTFUL MONOCHOME写真展がいよいよ今月28日から開催されます。

8月7日には若手写真家も交えてのハービーさんのレビュー会が東京で行われ、その様子はビデオ収録され、現在編集作業中です。

それぞれの写真家は写真活動歴のあまり深くない若手の写真家ですが、それぞれ身近な素材や少しひねったテーマ、笑顔の写真などを掲げながらレビューに臨んでいただきました。

最初に断っておきますが、この写真展の枠組みは写真の優劣をつけたり技術を競う写真展ではありません。写真の本来の力としての記録性や技術に加えて、テーマやコンセプトなど写真のメッセージや作家性をどのように伝えていくかを問いかける写真展として今後発展させていこうと考えています。

従って、写真展では、ハービーさんやギャラリーがそれぞれの写真家に対して評をつけることで、写真家やギャラリーがどのような観点から社会性や写真家のメッセージを読み取っているかを公表しようと考えているのです。写真を読み解く。これが写真において的確に行われていないと優れた写真活動、価値創造につながる写真の育成は困難です。また、社会の中の自分、社会から学ぶこと、社会へ還元できることを考える写真が評価されない世界であってはなりません。

写真展には、ハービーさん以外にまだ発展途上の4名の写真家が登場します。それぞれが考える社会と写真との関わりとは何か、写真活動の意味や目標は何なのか、そういったことを主題に9月25日にはトークショーを開催します。このトークショーにハービーさんが来られるかどうか現時点では決まっていませんが、鋭意交渉中です。トークショーではレビューの様子が放映され、その後で写真に関する現在の潮流の中で写真の中心としての社会的なメッセージをいかにして写真に載せていくべきなのか、を皆さんと一緒に話し合いたいと思っています。

どうぞお楽しみに。

HEARTFUL MONOCHROME写真展
ハービー・山口、なかがわれいこ、山本倫子、淡路勝、宮原亜可子
8月28日(土)から9月26日まで。
トークショー9月25日(土)午後4時から。
お申し込み先着25名。


TANTOTEMPOの10月は、写真作品の制作に携わる写真家のためにワークショップを開催します。これはコレクション展と併せて行うもので、作品のステップアップを目指す写真家や、海外での活動を目指す写真家、国内外のコンクールなどで説得力のある作品を制作する上で欠かせないステートメントの書き方など、4つのワークショップとひとつのイベントを開催します。

  1. ギャラリーディレクターのレクチャー「アルルの経験から」
  2. 東京で人気のワークショップの関西版「人を惹き付ける写真とは(仮題)」
  3. 国内外の第一線で活躍中の若手写真家のレクチャー「効果的なステートメントの書き方(仮題)」
  4. 12月のTANTOTEMPO Pure写真展へ向けたポートフォリオレビュー
  5. イベント「TANTOTEMPO写真祭」ギャラリーオーナーの手作りケーキやクッキーをほおばりながら写真を眺める、読む、買う(最終週の土日)

詳細は現在詰めておりますので、決定次第お知らせいたします。
お楽しみに。
R0015116.jpg7月30日、北野・ヴァンヴィーノにてアルル訪問の報告会を開催しました。

当日、多くの方に参加いただきましたが、おいしいイタリア料理とワインを楽しみながらの会となりました。ご参加いただきました方々、ありがとうございました。

まず甲南女子大学、馬場伸彦先生が旅の間に撮影した写真を紹介してくださいました。アルルに行った3人の中で唯一デジタル一眼レフをもってこられ精力的に旅の写真を撮影しておられたのですが、人物や風景などを150枚程度にまとめて音楽付きでスライドショーしていただきました。その後で「アルル写真の出会い」というイベントを、特に招待国である「Argentina Trail」、ロックの時代の写真「The Rock Trail」、そして「The Film Photography Trail」という3つの方向性について、解説していただきました。特にフィルム写真が衰退する中、もはや写真はカラーの時代である、と説明され、凝った演出を駆使して表現されるアルゼンチンの写真家の作品を取り上げたり、スターをモチーフにした80年代のロックシーンから数多くの優れた写真が生み出されていった背景などが紹介されました。

続いて、馬場先生と僕とで一般の参加者にもわかるように写真の歴史やアルルという町に少し触れ、アルル写真フェスティバルの一連の写真の枠組みを、"Heavy Duty & Razor Sharp"というメインコンセプトと6つの"Trail"という方向性で読み解いてみました。

Arles_img01.003.jpg
"Heavy Duty"というのは、頑強とか真剣と読み取ることもできますが、僕は多くの手数をかけて作り上げた、努力の上に積み重なった作品だと読み取りました。実際、展示された作品には気楽に作られたと思えるようなものはいっさいなく、その制作過程が大変だっただろうと思えるものばかりでした。また"Razor Sharp"とは、カミソリのように切れ味のある、ということですから、エッジの効いたとんがった作品と読めると思います。つまり、これからの写真の潮流は、やはりかなり趣向を凝らして練りに練られた誰も見たこともないような写真になっていくことは間違いありません。それは"Change Over Trail"というコンセプトで紹介されていた中堅以上の写真家と若手写真家の作品の対比でも見事に示されていました。若手写真家をセレクトしているTrailでは、もはや従来の写真の体をなしていない作品が大変多かったと思います。インスタレーション、角度によって見える画像が違って見える懐かしいが新たな写真、不定形にカッティングされた写真、壊された写真、映像などなど。従来の写真をイメージして見てみるととても理解できない構造のものが普通の「写真的な構造」と並列して並べられているさまは、かなりショッキングな風景です。オモチャのようにもふざけているだけのようにも、からくり優先でストーリーがないかのような作品もあり、混乱するのです。

アルルのディレクターである、フランソワ・エベルさんのインタビューでもその点を確認することができました。
「世界の写真の潮流はどこに向かっているのですか?」という問いかけに、エベル氏は質問の意図を読み取って
「『写真は死んだ』と毎年多くの意見が寄せられてくるけど、実際写真は今混乱しながらも新しい出口を見つけようとしているんだと思う。新しい表現は必ず出てくるし、それがいわゆる写真的なものではなくても、写真という素材を丁寧に使って構成するものであれば写真として扱うしかないと考えているんだ。」
僕は
「そうすると、人々は、一般の人は混乱しますよね。」
「そうだね、だから我々はここアルルでそれぞれが一連の進化によってつなげられているものであることを示す必要があるんだよ。」エベル氏は次のように続けました。
「'87年にアルルで取り上げた"Rock Trail"なども写真の従来の概念をことごとく壊すことになったきっかけでもある。Rockというメディアによってそれ以前の写真が変革するよう求められたんだ。」

"Rock Trail"が1987年に開催された時、パンクロックをはじめとするバンドの撮影をしていた写真家は、ロバート・メイプルソープやパティ・スミス、アニー・リーヴォヴィッツなど、「撮っていけないものなんて何もない」ことに気づいていたと思われます。ロックシーンを撮影した写真は、音楽雑誌やメディアにより世界中に配信され、多くの若者の賛同を得ることに成功する訳です。それは普遍性や美のみを価値としていた従来の写真界を真っ向から否定し、センセーショナルでむき出しの生や社会の表や裏の世界、スターの生き様や個人の性生活ですらテーマになり得ることを示した訳です。

報告会では、その他にもアルルで出会った写真家のポートフォリオレビューのレポート、アルルで日本の写真活動が全くと言っていいほど取り上げられなかった現状について議論しました。日本人の中にもポートフォリオレビューからフランスやポーランドで個展が決まるといった高い評価を受けた写真家がおられた反面、写真の潮流を読み取れないばかりに苦戦を強いられる写真家も多くおられたと思います。日本の写真全体について、エベル氏自身がやはりその沈降を認めていました。エベル氏は中国や韓国、タイやベトナムの写真活動が盛り上がっている結果、相対的に日本の存在感が薄れているのではないか、との考えを述べていました。エベル氏は中国の写真イベントのディレクターを担うなど、ヨーロッパにアジアの中でも中国重視の考え方があることを示唆していました。パリフォトでも10年以上参加していた日本のギャラリーがポジションを失うなど、少し心配なところです。

世界の写真界全体で見ると、コンテンポラリーアートの領域からも従来の"写真的な写真"は消えつつあると言います。「写真は死んでいない」と強調するエベル氏の脳裏には、写真的なものを"Film Photography Trail"でざわざわ保護的に扱わざるを得ない苦悩も見て取れ、5年前から会期を学校の新学期に合わせて延長させることで教育プログラムにも意欲を見せるなど、新たな写真の潮流の浸透に非常に神経を使っていることがうかがえました。アルル自体も一昨年からコミッティーのプレジデントが代わり、全体の構成や予算構成なども大幅に刷新されていると聞きます。ヨーロッパにおいて写真の存在感が低下することへの懸念は、日本でそう言われていることの懸念とは比べ物にならないと思われ、新しい技術、新しいメディア、新しい表現を巡るあらゆる可能性について、写真としてくくって擁護していこうという考えが明白です。

日本についていえば、やはり世界の中で取り残されないかという懸念がある訳で、その点についても報告会で取り上げました。個々の写真活動がそれなりに評価されていく日本的なシステムは決して悪い訳ではないけれど、いわゆるたこ壷化は顕著で、マーケットがごく一部の写真活動に限られている以上、全体として世界的なのアートのシステムに乗りにくいことは明らかです。日本の写真がカメラで表現することを愛する非常に多くの人々に支えられていることは明らかですが、カメラ資本やプリンタメーカのコンテストなどが唯一のチャンスであり、ステップアップの経過から組織的に引き上げていくようなアルルのような枠組みはまだ機能しているとは言えないと思います。日本で写真イベントが今後国際的に開かれた優れた写真の枠組みに育つためには、学校教育に入り込んだり、日本各地の幅広い層の写真活動を網をかけて有機的に評価して見ている必要があり、レビューによる写真家の評価基準やレビュアーの適格性、ビジネスとのリンクを考えた出会いの場の提供、世界の潮流と日本の考えや方向性を示す文化学術的なセミナーやワークショップ開催などが必須です。加えて、一般市民をはじめ写真家やギャラリー、出版、学術や企業、写真イベントそのものがゆるやかにリンクする写真文化を巡る新たな思想が必要なのではないかと思います。

R0011490.jpg
日本人のレビューについて、日本人の写真家がポートフォリオレビューで持ち込んでいた写真で僕自身が驚いた写真はやはり高い評価を受けていました。僕のようなまだ写真活動を始めて3年あまりの人にも説得力のある写真、面白い写真は、誰が見ても面白い訳です。本間さん(写真右下)は東京の写真家ですが、銀箔を貼付けたキャンバスに写真を特殊なインクを用いてプリントする手法で非常に高く評価されていました。新しい紙を開発したかのような驚きがある訳で、彼にしかできないシステムを構築して高い評価を受けていました。"perfect!"と評されていたといいます。このように誰が見ても驚くような写真、評価されていることを納得できる写真を撮ること、あるいは写真を使って新しいメディアを作ってしまうこと。これが国際的な潮流に立ち向かう唯一の方法であると言えると思います。

最後に、"center of photography "と僕が問いかけた写真的な写真について、エベル氏は相対的に地位が沈んでも歴史的には担保されていくだろう。そういう写真を撮り続ける人はずっといると思う、と語っていました。写真は拡散して価値創造を求める新しい表現と、従来の古典的手法とに分断されて存続していくのだろう、というのがエベル氏の考えだと思います。

TANTOTEMPOとしても今回のアルルの旅はギャラリーの方向性を決める上で非常に重要なものとなりました。個々の写真家の表現を見ていくこと、いろいろな表現を社会に見せることは大変重要ですが、それよりも写真の社会学、写真の構造について学ぶことが日本では急務ですし、今後求められていくと思います。文化予算などもどんどん削られていく中、日本の存在感が文化において世界の文化の中に決して沈まないように再構成する力は、すべての文化の担い手や愛好者が一致団結してつけるほかはないと確信的に思いました。

なお、アルル報告会はもう一度ギャラリーにて開催予定です。現在日程などを調整中です。多くの方が参加していただけるように考えています。また、こちらはUst配信なども検討していきます。

twitter

2010年8月

Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
Powered by Movable Type 4.1