Diary: 2009年5月アーカイブ

IMG_7819.jpg浅田政志さんのトークショーがTANTOTEMPOで開催されました。

新型インフルエンザをものともせず、お申し込みいただいたほとんどの方がTANTOTEMPOに来てくださいました。参加者全員マスク着用という、普段ではとても考えられないような状況、また狭いカフェ部分に椅子を並べ、後方にはスタンディングでご参加いただいた方も多数おられ、熱気でエアコンがフル回転するという状況での開催でした。まずはこのイベントに熱気を送ってくださった写真ファン、浅田さんのファン、そしてTANTOTEMPOにエールを送ってくださったすべての来廊者の方々にお礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。

実直で飾らない、これが浅田さんと初めてお会いしたときの印象でした。昨年の11月にTANTOTEMPOに来てくださったときのことです。その後、3月に木村伊兵衛写真賞を受賞され、数多くの写真展イベントをこなしていく中で、彼が今後どのような変化を遂げるのか、あるいはある種のスタイルを貫くのか、僕としてはとても注目をしています。僕たちは写真をイメージで見ているのだけれど、実のところイメージを通してそのイメージを作っている個性を見ているのだと思います。美しい整ったイメージを撮る写真家は本当にたくさんいるのですが、人となりまで見ているかというと実際はそうでもないことも多いと思います。僕は特にこの点に立って浅田さんを見ていました。

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トークショーは、おなじみの「浅田家」(赤々舎)という写真集に掲載されているイメージにまつわる裏話で始まりました。それぞれの演出がどのようにして形成されていくのかというプロセスが、家族と浅田さんとの関わり、浅田さんと写真という関わりで紹介されました。徹底して三重県で撮影されているというこのシリーズの主役・主題をあえて実の家族である父親、母親、兄という自己と切っても切り離せない「家族」にあてている理由が説明されていきました。きっかけが専門学校の卒業をかけた制作にあったこと、家族それぞれのキャラクターが作品すべてに及んで作用するように徹底して「演出」がなされていること、三重県でしかも自ら撮影場所を得るために苦労しながら交渉にあたっていることなどが紹介されました。こと撮影現場での家族にまつわるエピソードは、僕たちがイメージで見る範囲を超え生々しく鮮烈で面白いものでした。ギャラリーは、たびたび大きな笑いに包まれ、瞬く間になにかしらその「笑い」を共有したものにしかわからない一体感に包まれていきました。

実はこの一体感あふれる「笑い」こそ、これらの「演出」写真に絶妙なLIVE感を与えている原動力になっているのだと思います。「家族」という誰もが経験する生活単位を、三重県という家族と過ごす場所、自分が生まれてきた場所で徹底して演出し、驚くべき「家族」を産み出しているのだと考えると、僕が考えていたよりずっと浅田さんの世界は大きく広いのだと思い知らされたような気がしました。実際、彼は新たなシリーズとして全国の「家族」を撮る活動をしていて、ふたつの「家族」のシリーズが今後無限の広がりをもって展開されていくだろうと思います。「演出」であろうとなかろうと、「笑い」があろうとなかろうと、徹底したコンセプトで描かれる息の長い、プリントとしても大変質の高いシリーズは、「家族写真」=浅田政志という非常にわかりやすい図式でやはりアートの領域で形作られていくと思います。

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浅田さんは、質疑応答やトークショーのあとのサイン会でも本当にすばらしい態度で来場者に接していました。清々しい、実直で飾らないという印象は、会場のいたるところで聞くことができました。

写真集を買っていただいた来場者の皆さんに浅田さんから驚くべきプレゼントもあって、強烈な印象を残して神戸をあとにされました。

浅田さん、また今回のイベントに関連して労をお執りいただいたAURACROSS前田さん、本当にお疲れさまでした。
R0010640.jpg神戸は未明から新型インフルエンザの感染報道、またそれに関連する各種イベントの中止という未曾有の事態に遭遇しました。神戸祭りなどの大型のイベントが中止され、学校の休校が決まるなど、季節性インフルエンザと比較して有意に感染率、致死性が高いかという問題に対して科学的evidenceがそれを否定しているにもかかわらず、既定の対策として行政側の判断が働きました。これは現在の判断としてはやむを得ないと思います。

一方で、今回のような弱毒性インフルエンザでも海外で死亡例が多数報告されている事態を考えると、その影響は決して看過できないため、TANTOTEMPOとしても今日のイベントである馬場伸彦さんのギャラリートークの開催が妥当かどうか対応を考えざるを得ませんでした。

ただ、既に一部の来廊者の方がギャラリーに向かってくださっているということを受けて、来廊者の皆さんにマスクを配布するというギャラリーとして最低限行いうる対策をとった上で、最終的にイベント開催を決定しました。多くの方がギャラリーに足を運んでくださり、結果として大変質の高いギャラリートークとなったと思います。

R0010652.jpgのサムネール画像
馬場伸彦さんは甲南女子大学文学部メディア表現学科の教授です。氏は教壇に立つ傍ら多くの著作を執筆され、また写真活動も行っています。写真に関する氏の造詣は深く、独特の視点から写真を解釈されています。

ギャラリートークでは、このイベントのために特別ご用意いただいたスライドショーが紹介されました。まず、ルイ・ジャック・マンデ・ダゲールによって発明された写真表現手法であるダゲレオタイプが紹介され、氏の所蔵する実物が紹介されました。ダゲレオタイプに多くみられる被写体としての死した子供の肖像写真があることに触れ、写真が記憶の手段として肖像画に取って代わった経緯について説明がなされました。次にザンダー(August Sander: 1876-1964)の写真が紹介され、写真の写実性、演出性、写真から派生する類型学について解説がありました。

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続いて日本の原信三のゴム版写真の紹介、これらのむしろ絵画に近い手法に対して堀野正雄らがモンタージュや多重露光などの方法論、モチーフにアートの由来を求める撮影法などが紹介されました。

ウィトキン、マリオAの肉体とその解体、再構成といった絵画では表現し得ない深みのある写真表現、フレンドランダーのセルフポートレイトでも自らの影や鏡像を写真に写し込むことで明確に写真世界に作家自身が参加するというアイデアなどの説明がありました。

1時間半という非常に長いギャラリートークでしたが、聴衆も次々と紹介される質の高いスライドショーに馬場さんの軽妙なトークを身じろぎせず聞き入っていました。写真世界が深遠で多様な解釈を持ちうる世界であること、特にビンテージプリント、オリジナルプリントの文化的価値についてお話しされ、トークを締めくくられました。

TANTOTEMPOでは今回のような教養を深める写真イベントを今後も開催していくつもりです。少なくとも、日本には一般へのアート写真教育がなく、これが写真をアートとして生活に取り入れようとする人びとの育成を阻んでいる一因となっていると思います。アート教育を徹底して現場主義で行っている欧米と違い、日本では画一的な教科書教育が今でも続いています。とすると、このような写真に関する教養を深めるイベントはとても大事だと考えられます。

今後もTANTOTEMPOの写真イベントのご注目いただきたいと思っています。





P5101487.jpgTANTOTEMPOは皆さまのおかげで1周年を迎えることができました。

この1年間、本当に多くの来廊者の方に恵まれ、また多くの写真家、東京、大阪、神戸を基盤とするギャラリー、美術館の方々や友人にも支えられ無事1周年を迎えることができました。また、カメラ・写真系雑誌をはじめ新聞、情報誌やファッション雑誌など、多くのメディアにも支えられた1年でした。

この場を借りて厚く御礼申し上げます。

TANTOTEMPOの、特に強力なライブラリーを併設したカフェ、そして独自に展開する若手を中心とした写真家の活動、そしてメインギャラリーでの6つの企画展、1つのグループ展、イベントなど、関西のみならず関東圏にもあまり見かけない業態での手探りの活動だったと思います。それにも関わらず予想を超える反響があったのは、この地域での写真に関与する文化活動がこれまであまりにも小さかったためだと思います。現在神戸には、写真を巡って小さなうねりが起き始めていて、主に広告業界出身のアート系写真を中心に展開するPAXREX、ヨーロッパや国内の高品位なアート写真を取り扱うヤマキファインアート、極めて歴史的価値の高い写真のコレクターであり写真家でもあるディレクターが運営するモノクロ暗室を併設するBar Ritzなどが、半径500m以内という狭いエリアに次々と立ち上がっています。

それぞれの設立趣意、運営理念は異なっても、これらの活動が写真愛好家の裾野を広げることは間違いなく、神戸という街と調和する写真文化が形成されていくことを願ってやみません。TANTOTEMPOとしても、可能な限り美しい写真活動を担っていきたいと思います。

さて、昨日TANTOTEMPOでは1周年を記念するイベント、コレクション展、また浅田政志さんの特別展のオープニングイベントを開催し、多くの関係者、友人たちが駆けつけてくれました。せめてものお返しに、と僕自身が演奏してのボサノヴァライブもありました。酔ってつまずいた場面もあったかと思いますが、お楽しみいただけたのではないかと思います。

浅田さんの展示も始まりましたが、ものすごいです。この写真のすごさはギャラリーで感じてもらうしかありません。プリントの品質も半端じゃありません。5月23日までの期間限定ですので、見逃さないようぜひギャラリーにお越しください。

また、かねてより告知している通りあと4つのイベントが開催されます。浅田さんの5月23日のトークショーも、若干数ですがスタンディングにてお申し込みいただけます。5月23日は午後4時にてカフェ、ギャラリーともクローズし、イベント参加者のみご入場いただきます。ご注意ください。

さらに、5月16日の馬場伸彦さんのギャラリートークは写真界隈で活動されている方、写真愛好家、一般の方にも大変有意義な会になると思います。写真論という切り口で写真を分解、再構築すると、写真を撮ったり眺めたりする行為にどのような動機が介在するのか考えさせられるし、写真の見方が変わるだろうと思います。ぜひご参加ください。

どうぞこれからもTANTOTEMPOをよろしくお願いいたします。
R0010638.jpg今日は連休中ということもあり、栄町通も大変な人出でした。カフェは時間によって波はありましたが、本当にいっぱい。玄関でお断りする時間帯もあり、キッチンスペースはてんやわんやの大騒ぎでした。

そんな中、午後5時から田中亜紀さんのギャラリートークを開催しました。田中さんがアメリカで写真を学んでいた頃の作品をはじめ、プロとして撮影している舞台、光あふれる太陽をテーマとして撮影された作品などがスライドショーで紹介されました。その間、アメリカでの写真にまつわる教育の日本との違い、人物を中心に撮影をしていた関係から舞台写真家として活動するきっかけになったプロセス、また太陽を作品制作の中心に据えるようになったきっかけとなったイメージなどが紹介されました。

僕が特に面白いと思ったのは、学生時代に制作したいくつ
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かの作品の中に、現在TANTOTEMPOで展示しているDAZZLEのシリーズに通じる田中さんらしい撮影技法が含まれていたことです。主題はDAZZLEとは全く異なりますが、主題を生かすために画の周辺に独特の光彩が踊るのです。テーマは時代により変化しても、一人の写真家としてその撮影スタイル、技法は維持発展されていくというよい例だと思います。

TANTOTEMPOが田中さんの作品展を開催した理由について、僕も少しお話ししました。花や木々を主題に太陽、眩しいばかりの光を絡めて撮影する写真家はたくさんいますが、逆にこれらのものをモチーフに、主題を太陽としている点が独創的だと考えての写真展企画です。DAZZLEのシリーズは主題が大きいためより大きな広がりを見せてくれる可能性もあり、TANTOTEMPOとしては今後の田中さんの作品制作に期待をしています。

5月5日、明日は田中亜紀さんの写真展の最終日です。ぜひTANTOTEMPOで田中亜紀さんのDAZZLEをご覧ください。

R0010632.jpgTANTOTEMPOにて+plus写真家として登録いただいているサイトーシンさんの写真展に行ってきました。

TWO PHOTO EXHIBITIONS ABOUT CATSという2人展のうちのひとつの写真展です。モノクロのバライタ作品ですが、"猫"をモチーフに、猫の居る町を撮影した作品群です。猫が住み着くことのできる条件の整った町を「懐の深い町」と定義し、そういう懐の深さを見せる風景を切り取っていく非常にわかりやすいコンセプトの写真です。

明快なコンセプトと併せ、プリントのすばらしさも大変心地のよいものでした。また、猫が包み込まれるように町の景色の中にとけ込んでいる表現力は、猫を撮影し続けるサイトーさんの真骨頂だと思います。しっかりとアートになっていた写真展でした。

ぜひ皆さんもご覧になっていただきたいと思います。

TWO PHOTO EXHIBITION ABOUT CAT
「点猫」ばんひろみ写真展
"Trivial Scene" サイトーシン写真展
5月1日〜5月6日  11:00 − 20:00(最終日17:00閉場)
神戸アートビレッジセンター
神戸市兵庫区新開地5丁目3番14号
T:078-512-5500