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DSC00484.jpg12月10日から開催してまいりましたTANTOTEMPO pure展が終了しました。

この写真展は若手の写真家にレビューを通して展示の機会をもっていただき、また来廊者の方々にも作品を飾る生活の楽しさを訴えようとTANTOTEMPO設立の2008年から毎年開催しているもので、今年も家具を設置しての展覧会となりました。

最近は展覧会の始まる前にその展覧会が成功するかどうか不安になり胃が痛くなることが多いのですが、「成功」の定義はともかく、終わってみれば来廊者数も反応や売り上げもそこそこ例年通りだったのではないかと安堵しています。今年のTANTOTEMPO pure展は海外から3写真家を招待して大作品のユーモラスな作品やコンセプトの明快な作品、展示の工夫をするなどいろいろな点で作品が社会に訴える仕組みを見せられたかと思います。参加した写真家また来廊いただいた皆さんからも例年以上に好評で、大変有意義な展覧会だったと思います。一方で、作品が大きくなる傾向があり、また高レベルになったために価格帯が例年より少し上昇したこともあり、昨今の経済的状況で売り上げが生まれるのか大変心配していましたが、どうやら杞憂に終わったようです。決してすばらしい成果とはいえませんが、近年の経済状況、作品のレベルなどからすれば上出来と言えるのではないかと思います。

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それにしても今年の日本の若手写真家は、よく頑張ってくださった方とそうでない方とが成果の上ではっきりと分かれる結果となりました。いわゆる営業的なことを強いるのは僕たちギャラリーの立場からすればこころ苦しい訳ですが、自ら率先して作品を世に出したいと願いそれを行動で示す姿勢があった日本の写真家の3名はぎりぎりのところで結果を残せたのが良かったと思います。彼らとは展覧会が進むにつれ一体感が生じて、彼ら同士がつながっていくのを大変興味深く見ていました。ギャラリーにこられない外国勢の作品の解説を引き受けてくれるすばらしい姿勢の写真家もおられました。

最も売れたのは海外の一人と日本人の一人の各2イメージ延べ3作品ずつ。それぞれ作品力、アートや社会への参加の姿勢が他を一歩抜きん出ていたように思います。特に海外の写真家で一番人気だったDavid Schalliolさんの作品と日本人写真家の清家政人さんの作品について少し解説したいと思います。

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Davidさんはアメリカの名門シカゴ大学の社会学部で準教のポジションにいる社会学者です。社会学での研究テーマが都市の境界線を読み取ることで、都市の辺縁に存在する孤立した建築物を都市の拡張と衰退の視点から眺め研究をしています。そのテーマがそのまま写真作品になっているのが今回の写真展で展示した風景写真なのです。イメージは非常に精緻で色彩が豊か、構図やライティングを捉える視点も完成度が高く、もちろん建築写真としてみてもうまい写真と言えます。来廊者の方の多くが彼の作品を最も理解しやすく欲しい作品、とたたえてくださったのが印象に残っています。展覧会後、一報を入れると大変喜んでくれました。

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清家さんは展示6作品のうち特に2作品に注目が集まりました。写真はDavidさんとは正反対、どちらかというと日本的な心証風景かと思います。日本画の異時同画法という、一つの画面に時空の異なる絵を落とし込んでいくという手法を写真で実現できないかと考えて、複雑な工程を作品づくりに課しての参加となりました。その結果、注目されたいくつかの作品には複雑な構図からもたらされる美が醸し出されており、作品としての意図を表わすことに成功したのではないかと思います。清家さんはまた、東京からの参加でしたが、設置から撤収まで非常に高い意識での参加姿勢があり、ギャラリーとしてもその辺りの姿勢を非常に高く評価しています。あとは作品の精度を上げて、注目された2作品と同レベルのわかりやすい美しさを制作姿勢から加えていけばかなり質の高い作家活動が繰り広げられるのではないかと思います。

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他の日本人写真家2人も頑張りました。イメージはまだまだ実験段階、まだ伝えきれない部分もあるのだろうと思います。しかし、今回の展覧会の中でより多くのことを学ばれたと思います。アートに携わることの大変さは何も売り上げばかりで語ってはいけないのですが、グループ展の他の参加者の作品が売れていく様子を横目でみることは非常に苦しい思いがあるものです。しかし、めげずに最後まで熱心に自分の作品を売り上げていたことが何より結果につながったと思います。作品については他者のこころに響かない限り評価される所に到達できないことは明らかですので、作品をより高い姿勢で制作し、ギャラリーや来廊者と真摯な態度で交流し、フィードバックに耳を傾ける姿勢を持つことが何よりも大切です。彼らにはこれからも頑張っていただきたいと率直にエールを送りたいと思います。

実績としては2週間の期間中、12作品が販売されました。多くの方が来廊くださり、またこの展覧会の趣旨に賛同くださってたくさんの応援をいただきましたことを感謝しております。この場を借りて厚くお礼申し上げます。

R0011637_2.jpg【写真:金箔を用いて制作された作品を前に説明する大和田さん】
大変好評な大和田良さんの写真展"FORM"がいよいよ最終週となっています。

"FORM"は、盆栽を撮影した大和田さんの新作シリーズですが、盆栽の特徴や歴史を伝えるためにさまざまな工夫をしており、大和田さんらしい美的なセンスが光る作品となっています。

10月29日、大和田さんが神戸に来られトークショーを開催しました。トークショーでは盆栽のシリーズを撮影するに至った経緯がスライドショーで紹介され、日本の美、日本的な芸術を作品として描くことが最初の目的だった、と説明されました。さまざまな伝統美があるなかで盆栽というモチーフを選び撮影対象としたこと、さらに盆栽を描くために参考にした俵屋宗達や尾形光琳など、琳派の絵師によるふすま絵などを紹介され、これらが作品作りに大きな影響を与えた、と話されました。

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スライドショーでは、初期の試験的な撮影をするなかで、従来の対象にまっすぐに向き合う方法論では盆栽そのものの構造を十分に伝えられない、盆栽の力に負けてしまう、との思いを抱き苦悩したことが紹介されました。その上で、どのような表現であれば盆栽と対等に向き合いながら美を描けるのかを追求したということです。最終的に、さまざまな季節のいろいろな時間帯の光を利用して数多くのカットを撮影し、それらを一つのイメージの中にコラージュの手法で配置することで美しい作品が作り上げられていった、と話しておられました。盆栽が数百年という時間を経て次の世代に引き継がれいく時間の長さを伝えるために、あらゆる時間軸上の陰影を作品に織り込んでいった、という説明には非常に説得力がありました。

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スナップ写真の一時性、即時性という対極にある写真の手法についてまずトークの導入部分で話され、そのあとで今回の作品づくりについて説明をされたのは非常に効果的でした。写真をあらゆる視点で拡張すること。アートとはつまるところ新しい視点や概念を創造することでもある訳で、その意味で大和田さんの盆栽は多くの可能性を示すものです。新しい美の拡張を訴える作品がつまらない訳はなく、またデザイン的にただ分割して並べ直しただけのものではない、悠久の時間という概念を作品の織り込むことを目的として異なった時間、季節に撮影した写真を同一のイメージに配置した今回の手法は、見事に実を結んだと言えます。

トークショー後のレセプションでは参加者の皆さんと大和田さんが作品を前に熱心に話されておられました。また、たくさんの作品が販売されました。

TANTOTEMPOでの大和田さんの"FORM"は11月6日までです。ぜひお越しになり作品をご覧いただきたいと思います。
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【ムービーを見ながらレビューの様子を語るPhotographerHALさん】

先日レビューサンタフェ2011の報告会を開催しました。

これは僕自身が様々な写真やアートの枠組みのディレクターやレビュワー、参加者のインタビューを通して、現代のアートや写真が様々な国や社会の中でどのような位置づけにあるのかをアート教育を軸に見いだそうとする著作を書いている関係で、6月1日から6日までアメリカを訪れたものです。アメリカでも有数のレビューイベントを取材してきたので、7月9日夕方からTANTOTEMPOにて報告会を開催し、多くの方が参加してくださいました。

レビューはニューメキシコ州サンタフェのヒルトンホテルで開催され、6月2日の前夜祭から3日4日のレビュー、さらに5日のレクチャーと延べ4日にわたって開催されました。約500名の応募者の中からCENTERという運営組織のコミッティーが100名に絞り込んで、この100名がそれぞれ10名のレビュワーを選んでレビューを受ける、という方式です。レビュワーは、コンテンポラリーアート系の美術館、写真美術館の学芸員はじめ、全米から選ばれた一流の写真の担い手が担当。レビュー受ける写真家は、全米、ヨーロッパ、アジア、中東からの参加者で構成されており、日本からも保坂昇寿さん、PhotographerHALさんが参加されました。

レビューやインタビューの内容は、これから3回程度に分けてコラムとして書いていきますが、昨年アルル国際写真祭を取材した際と同様、事前にCENTERのトップであるLaura Presseleyさんに取材許可を取りほとんどのセッションの取材を行うことができました。また、直接保坂さんやHALさんのレビューの様子をビデオ撮影することも許可されたため、報告会はムービーを多用し、取材部分、プライベートムービーなどを織り交ぜて、スライドショーにて開催しました。

訪米の際、サンフランシスコ経由でサンタフェに向かったため、乗り継ぎの時間にサンフランシスコを訪問。サンフランシスコ空港のビル内を歩くムービーからプレゼンテーションが始まります。サンフランシスコでは一旦空港を離れ、兼子裕代さんという写真家のスタジオを訪れ、オフィスとして使用しているうらやましいほど整った制作現場としてのスタジオを見学した様子を、兼子さんの作品とともに参加者に紹介しました。また、ゲストとして参加されたベルギーで活躍されている井本礼子さんが海外に写真の活動をもとめるに至った経緯を話され、海外に写真の活動の本拠を求める写真家の気持ちなどを紹介されました。

レビューのセッションが始まり、保坂さん、HALさんのレビューが始まると、二人の評判が非常に高く驚かされた様子をレビューの光景を通じて説明を行いました。どうして日本人写真家の二人はアメリカで受けたのか。その理由を知ることは、戦略的にレビューに関わる手段を得ることだと思います。参加者の皆さんはこの報告会のためにTANTOTEMPOに来てくださった保坂さん、HALさんの生の意見にとても熱心に聴きいっておられました。強い作品を丁寧に作り上げることがなにより必要ですが、コミュニケーションのスキルを持つこと、受けそうなレビュワーを的確に選ぶこと、そしてやはりひととして触れ合うスキルを持つことがとても大切だと思います。また、HALさんのように既に実績のある写真家が明確な意志を持ってアメリカのマーケット開拓に乗り込む強い姿勢についても学ぶべきものがたくさんあることが示されたと思います。

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【レビュワーのアートの中での位置づけを紹介】

さらに、レビュワーのうち、シカゴの写真美術館のキュレーターのナターシャ・イーガンさんのインタビューを抜粋で紹介しました。シカゴのコロンビアカレッジというアート教育の最も高い位置にある学校の一つに附属するシカゴ写真美術館のプログラムや教育について、約15分のインタビューをとったものを編集し見ていただきました。また、レビューを受けにこられた写真家のうち、大変優れた活動をされていた3−4名の写真家にフォーカスし、特別に許可をもらってイメージを紹介しました。これらの中には将来TANTOTEMPOで紹介する可能性のある写真家もおられます。

続いて、写真やアートの教育がアメリカでどのような位置づけでなされているのか、レビューサンタフェの総合ディレクターであるCENTERのLaura Presseleyさんのインタビューを紹介しました。2005年にハーバードビジネススクールから発表された論文が紹介され、教育の中でいかにイマジネーションを豊かにするプログラムが大切かを説いており、美術教育がその最も近道である、という内容の論文の紹介がありました。「New MBA as MFA」つまり、「ビジネスの学位は、アートの学位に習え」というかなり衝撃的な内容です。アメリカでも想像力の欠如からコミュニケーションが取れなかったり、常軌を逸脱する考えが台頭することがあり、美術教育からこれらの欠点を克服しようとする動きがあるようです。日本が不況や政治不信に喘いでいる状況について、アート教育の不在を危惧する声は彼らからもあり「誘われればいつでも協力する用意がある」という思いもあるようです。先のナターシャさんや他のレビュワーなども、欧州や韓国、中国など海外のレビューには盛んに誘われるのに日本からはいっさい声がかからない、どうしてなんだ?と逆に質問を受ける場面もありました。これらの点は、報告会参加者も非常に衝撃を受けておられたと思います。


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【トークに参加された左から井本礼子さん、HALさん、保坂さん】

最後に、僕として考えた日本の写真への提言をまとめて紹介しました。日本の写真の中心地(国立写真美術館や研究・学究機関)を作ることや、写真やアートが"open to the public"であり続ける必要性、そしてMFAなどの学術的経験値をいかにアートに付加していくか、という観点からの教育へのてこ入れ、さらにはマーケット開拓の正統な方法としての幼少時からの美術教育の必要性についてお話ししました。

1時間半に渡る「ムービーとスライドショーで綴るレビュー・サンタフェ」ですが、参加者の皆さんが最後まで興味をもって見ていただいたと思います。現状の日本のアートは、その閉鎖性や安売りの問題、レビューを受けても評価すらまともに話せないレビューワーやビジネスにつながらない写真家レビュワーの適格性など、アートや写真の周辺には多くの問題がある訳で、これらの問題にはポジティブに解決に向かう意思が必要です。報告会に参加してくださった方がそれぞれの活動の中でこれらの問題について認識し、活動に反映されていくことを期待しています。

なお、この報告会で使用したムービーは新規編集したものを8月13日(土)以降、TANTOTEMPOエントランスのモニターでにて上映をする予定です。興味のある方はTANTOTEMPOまでお越し下さりぜひご覧ください。

先にも書きましたが、レビューサンタフェの詳細は、今後3回程度の記事にして報告する予定です。お楽しみに。
R0011100.jpg6月11日から開催していたオサム・ジェームス・ナカガワさんの写真展が終了しました。

アメリカ・インディアナ州、インディアナポリスのブルーミントンという町にあるインディアナ大学で教鞭をとる傍ら、家族や家族をモチーフにした作品、さらにはそこから発展して沖縄や戦争にテーマを求める強い写真を制作し発表するジェームスさんの"廻-Kai"ですが、11日のオープニングトークショーから終了まで、その壮絶なプリントの美しさで多くの方を魅了したと思います。

「家族」という非常にプライベートな写真、死にゆく父と新しい命の恵みという局面から紡がれていく誰もが巻き込まれる普遍的なドラマが鮮やかに描かれ、共感を呼ぶのです。このシリーズはジェームスさんの力量を世界に知らしめた代表作と言えます。

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インディアナ大学の准教授という立場から、今回の写真展では10名のアメリカの学生を日本のワークショップに連れてこられました。このワークショップは震災で開催が危ぶまれたものの、とても人気があるようで、いろいろ指導の背景をみていくと写真教育だけでなくさまざまな人間教育もなされていることがわかります。サンタフェでも2名の門下生がレビューを受けることのできる100名に選ばれていて、ジェームスの教育のレベルの高さを示していると思います。

折しも、僕自身がアート教育やマーケット形成に興味を持ってレビューサンタフェやその他の写真やアートの枠組みに参加し、アメリカの広大な写真世界を見てきたことから、ジェームスさんの活動の背景を知ることができましたが、トークショーでも、またその後に開催した日米の写真家を目指す学生の交流ワークショップでも、一貫してアート教育の重要性を示してくれたことは大変心強く思いました。系統的な教育法や現場教育が全くといっていいほどない日本のアート教育へのヒントは数知れず、これらをまとめていくことをわれわれ日本のアート界全体が考えないといけないと思います。

ジェームスさんは現在沖縄に滞在され、ガマのシリーズで作品を制作されておられます。日本を離れるまで精力的に写真活動を行われ、アメリカに戻られる予定です。今後は3月のヒューストンでの写真展などにも参加される予定ですので、僕も引き続き情報を共有しながら見ていようと思っています。

なお、TANTOTEMPOのSocio Arteの枠組みなどに共感されたジェームスさんの提案で、ジェームスさんやアメリカの有力写真家が参加する日米合同の写真チャリティーイベントが東京のP.G.I.とTANTOTEMPOで開催されます。
近く詳細を発表いたします。どうぞご参加くださいますようよろしくお願いいたします。

R0016316.jpgTANTOTEMPOでは、これまで写真を学ぶ神戸の学生を集めてアート教育の実践の可能性をいろいろ探ってきました。写真集を読んだり、実際に写真というアートについて、一枚の作品にこめられた作家の思いをどのように読み取るかを若い世代のうちから考えることで、作品の意味と価値を読み取るトレーニングをすること、それを写真の制作に応用することがとても大事だと考えているのです。

写真の価値を考えた時、多くの日本の写真家は自らの作品に芸術文化的な、あるいはコモディティーとしての価値を描くことができません。また、自分の作品の売りが何処にあり、何を軸に社会に問いかけているのかを明確に語れる写真家もとても少ないと思います。社会に問いかける、という厳しい評価軸に自分をおいて勝負をしていることが少ないからで、本質的に日本の写真は閉じた輪の中で漂っているようにしか見えないことが多く、これが写真に関わる人々の実に95%を占めると僕自身は考えています。

さて、インディアナ大学のオサム・ジェームス・ナカガワさんのクラスの学生が10名ばかり来日し、約3週間に渡り大阪をベースに写真のワークショップを受講、精力的に多くの写真活動をおこなっています。これに合わせ、神戸の写真を学ぶ学生8名とジェームスさんの学生スタッフ7名が写真を巡って意見交換をするワークショップを今朝TANTOTEMPOにて開催しました。

ワークショップはグループ演習の手法で進め、まずお互いの紹介を通じて打ち解け合うアイスブレーキングの時間を取りました。日米の学生二人ずつがペアになり3分間でおのおの自己紹介を行い、その後1分ずつ自分が話した相手の紹介をする「他己紹介」を行いました。神戸の多くの学生は英語にチャレンジして相手の紹介を行っていましたが、皆が物怖じせずよくがんばったと思います。

続いて日米の混成チーム二つにわかれ、それぞれに一冊写真集を与え、その写真集のイメージの中にあるあらゆる写真の要素や素材、断片を抽出して書き出すよう課題を出しました。発表者役を決め、書記、司会役をきめて、10分あまりで要素の抽出を行いました。つぎに、それらの要素のうち最も人々に強い印象を与える事柄をアートを構成するモチーフとして再構築するように促しました。これには15分をかけ、最終的に二つのチームがそれぞれ発表者によってその写真のアートたる理由を説明していただきました。

与えた教材は、Aチームは楢橋朝子氏の作品集「half awake half asleep in the water」、BチームはMassimo Vitaliの「Landscape with Figures」でしたが、それぞれの発表は文句なしの要点を得たものでしたし、Aチームは特に最近の津波被害の様子をひいて、いわゆる溺れることの恐怖という視点を楢橋さんの作品に加える非常にレベルの高いプレゼンテーションでした。

次に、ジェームスさんの作品"Kai"について、パーソナル(プライベート)な作品がどのようにしてアートの構造の中に組み込まれるかを、ジェームスさん自身が世界中のプライベートな作品を制作する写真家に焦点をあて紹介し、家族写真という構造の中にある被写体と撮影者の親密さ(intimate)こそが作品と観客の対話の糸口になる、との考えを話され、日本の最近の表現の内向きさの中にはこの親密さの提示がなく対話が成り立たないものがあるのではないか、という意見を述べていました

最後にジェームスさんによってインディアナ大学の学生たちが製作中のシリーズの紹介がスライドショーでなされましたが、ほとんどの学生がBFAあるいはMFAの経過中で、いわゆるアートの最も高等な教育を受けているだけあって、ものすごいレベルの高いアート性の高い作品を制作していたのが印象的でした。これには日本の学生も驚いたと思いますが、この差こそ私たちが今後埋めていかなくてはならない写真の構造の差異でもある訳です。ジェームスも言っていましたが、今日行ったワークショップは、アメリカではアートの基礎的な教育の中で繰り返し繰り返し行われるべき初期の教育だと考えられています。自分の作品で何を訴えたいのか、どう訴えるのか、どれくらいの価値があるのかを、グループワークを通じて認識していく方法は、お互いにクリティカルになれない相互依存型の写真の世界を構造する日本とは全く異なります。

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2時間半の非常に短い時間でしたが、特に日本の学生にとっては有意義で面白いワークショップになったのではないかと思います。ワークショップ後の茶話会では日米の学生が写真について話し合う目的通りのワークショップとなり、ジェームスさんもこういう機会はなかなかないから面白い、またぜひ機会を作ってやりたいね、と話されていました。参加された学生の皆さん、ジェームスさんとインディアナ大学の学生・スタッフのみなさん、おつかれさまでした。


R0011043.jpg昨日オサム・ジェームス・ナカガワ写真展が始まりました。初日にも関わらずジェームスさんの展覧会、トークショーにはたくさんの方が来てくださいました。また、多くの写真関係者が全国から駆けつけてくださったのもうれしいことでした。

ジェームスさんといえば沖縄の断崖絶壁をデジタルで何十枚ものイメージを合成して表現したBANTAのシリーズ、同じく沖縄の洞穴を撮影したGAMAのシリーズが有名です。TANTOTEMPOでは昨年のNikonSalonでのジェームスさんの展覧会の期間中TANTOTEMPOを訪れてくださったことから交流を重ね、今回の展覧会にこぎつけました。今回の写真展はジェームスさんの廻-Kai-シリーズで構成されています。これはTANTOTEMPOとして特に強い希望を表明して実現したシリーズで、これらの作品がジェームスの本質的な表現の豊かさをあからさまにしているという点で世界から高く評価されているものです。シリーズは、ジェームスさんの家族を巡るシリーズで、非常にプライベートな作品です。しかし、タイトル「廻-Kai」が示すとおり、すべての写真がしっかりした土台つまり「輪廻」「環の廻り」の上に構成されていて、私たちにそもそも家族とは何なのか、私たちが何処から来て何処に向かうのか、という点に焦点が当てられ、構成されています。その土台=ボディーのうえに家族の喪失と新しい家族の誕生を並列に眺めながら、自らの廻を理解することに注がれます。余命宣告をされたジェームスさんの父と、ほぼ同じ頃に知った妻の妊娠を機に撮り始めたシリーズとして、父の肖像や妊婦の裸婦像、生まれた娘の肖像が美しく描かれていきます。

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家族写真や恋人の情景などがどのようにしてアートの装置を持つか、この点についてはある程度写真の理解を進めないとわかりづらい部分があります。昨日行われたジェームスさんのトークショーでゲストである竹内万里子さんがジェームスさんの作品づくりについて問いかけていく中で、やはり作品の美しい佇まいのみならず、全体の土台に何があるのか、ということを話されそれがしっかりしている必要があると話されていました。ジェームスさんは、シリーズを通して普遍的な要素、つまりひとが死にひとが生まれる家庭という最も身近な構造の中にこれらの普遍があり、それがプライベートな意味合いを超えてイメージに付加された時、美しい、意味のあるアートの写真になっていくのだと話されました。加えて、そのストーリーは完全に出来上がったものである必要はなく、ある意味で未完成なものを提示しながら観客がその未完成な部分をその想像力によって補完してこそ作品に輝きが宿る、ということを語っておられました。従って、シリーズには父の肖像と娘の肖像、妻の肖像が混じったかのように提示され、その間に凍った亡き父のジャケットやクリスマスツリーなど一見脈略のない作品が組み込まれることによって、観客がそれらのイメージにどのような意味があるかを作品と対話するそのことにこそアートの意味があるのだ、と語っておられました。竹内万里子さんは非常に的確な進行によって廻シリーズをひもといていかれました。もう一つ竹内さんが投げかけてくださった話題は、この作品が非常に美しい銀塩写真だということです。この美しいプリントの黒の階調は、まるで上質な黒のコードバンのような滑らかで鈍い輝きを放つものですが、僕自身こんなに美しいプリントはなかなか見たことがありません。もともと「ドライブインシアター」のシリーズ、BANTA、GAMAなどもデジタル写真で構成されこれらがジェームスさんの立場を「デジタル写真家」と言わしめる訳ですが、ジェームス自身はそのような分類よりも、このシリーズは銀塩で作るべきだと自ら決定して制作したのだ、とその経緯を話されました。

トークショーの後はオープニングレセプションを開催しました。各地から写真関係者やインディアナ大学のジェームスさんがワークショップで日本に連れてこられた学生の皆さん、竹内万里子さんの大学の学生の皆さんなども参加され、狭いギャラリースペースがいっぱいになってしまいました。

ジェームスさんはオープニングの週末を在廊され、一旦研修地の大阪に戻られ学生たちの教育活動にあたられます。

18日19日にも在廊される可能性がありますので、Twitter @tanto_tempo でフォローください。

18日午前10時からインディアナ大学の学生、関西で写真の勉強をしている学生をTANTOTEMPOに招いてワークショップを開催します。写真の「アートの装置」をテーマに、日米の学生が国別あるいは混成チーム別にディスカッションを行い意見を述べ合うグループワークを行います。興味を持っていただける方はオブサーバー参加が可能ですのでぜひTANTOTEMPOにお越し下さい。


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DSC00113.jpg思い返せば2008年5月10日。TANTOTEMPO誕生のその日。

この時も雨が降っていて、ハービー・山口さんとギャラリー立ち上げにご尽力くださったBlitzGalleryの福川氏を出迎えに栄町通を傘をさして歩いていたのが昨日のことのように思い出されます。昨日も時折激しい雨が降る中、たくさんのハービーさんのファン、またTANTOTEMPOの活動にいろいろ参加してくださっている私たちの友人を迎えて、ハービーさんのトークショーを開催しました。3年というと長いようで短いようで、やはり長い日々でしたが、TANTOTEMPOが少しずつ成長してこられたのは良き写真家に恵まれ、たくさんの写真ファン、友人、また他の写真ギャラリーや関係者のご協力があったからだと実感します。アートや写真界隈のいい話題もそうでないと思われる事柄も、日々写真の勉強をしながら咀嚼し理解するしかない僕たちにとって、3年もよく続けてこられたな、と思いいる一方、経済的には決して楽ではない、むしろかなり綱渡り的な事情を抱えながらの日々である訳で、いろいろな思いが交錯することも確かです。しかし、写真というものはなぜか愛しくなぜか腹立たしいもので、とすると何やらギャラリーを育てていることが息子か娘を育てているかのようにも思えてきて不思議な気持ちにとらわれることもあります。もちろん、その息子あるいは娘は出来が良い訳はなく、相当な放蕩ぶりともいえるのですが、何か愛しいものである訳です。

ハービーさんのトークショーはいつも本当に驚かされます。集まってくださる方々の熱心さやリピーター率もそうですが、やはりトークのすばらしさが際立ちます。昨日のテーマは旅。今回の写真展はMy Journey, My Photographyと題したハービーさんの新しいシリーズの立ち上げでもあった訳で、ロンドンに渡ってそこからさらに旅を重ねていく若者の瑞々しくも甘酸っぱい世界観が十二分に見てとれるシリーズになっているその理由をユーモアたっぷりに話してくださいました。若者特有の「荒削り」なものは何もなく、あくまでも繊細に世界の感触や距離を手を伸ばして触れて計っているかのような、そんな作風のように感じられます。そしてそれが写真を撮る上での変わらないセンスによって美しく修飾されている、そんな写真の世界が今回の"Oil, Pride & Crisis"というコンセプトの上に描かれているのですが、トークショーではもちろん数々の撮影秘話が明かされて大変楽しいリズムのあるトークでした。日本写真協会賞作家賞を受賞されたことを会場全体が喜びを共有し、TANTOTEMPOでの写真展や兵庫県西脇市の西脇病院で開催されているARTinHOSPITAL/ART PROMENADE in 西脇病院の「ハービー・山口写真展」のことをご自身がFM放送の全国ネットで紹介されるなど、また東日本大震災の支援のためにSocio Arteや他にもたくさんの支援活動に参加されたことなど、ますます写真活動の中において写真家としての社会参加や写真のポジティブな表現について本当に多くの教唆をお示しいただいたトークショーだったと思います。いつも通り予定時間を大幅に越える2時間に渡るトークでしたが、会場の参加者の皆さまも狭くて蒸し暑い中本当に節度のある美しい姿勢でおつきあいしてくださり、主催者として本当に嬉しい気持ちでいっぱいでした。

今後の活動については、社会的にインパクトを与えうる若手の発掘を特にポジティブな表現に訴えるものの中から見いだすこと、またそれを海外へいち早く売り出すチャンネルを構築すること、国内や海外の主要な写真イベントの主催者へのインタビューをとること、海外進出を希望する写真家のとりまとめ事業、また僕自身の活動としてはARTinHOSPITALの活動をTANTOTEMPOの事業の柱に育てること、今年中に写真に関連する著作を書き上げること、などなど。直近の目標はレビューサンタフェの主催者への取材と若手写真家のポートフォリオ、写真集をアメリカやパリのギャラリーに持ち込むことなども実施予定です。

トークショー後は山田の作った手作り料理で50名あまりの参加者の皆さまとともにハービーさんの写真展のレセプション、またTANTOTEMPO3周年のお祝いを盛り上げていただきました。ひとの笑顔が途切れることなく、参加者一人一人と談笑され、即席のレビュー、撮影などたくさんの交流をされて久しぶりの神戸を楽しまれて帰られたのではないかと思います。TANTOTEMPOにとってもこの上ないすばらしいお祝いでした。参加者の皆さん、ハービー・山口さんにこの場をおかりして深く感謝申し上げます。

写真展は6月5日までです。ぜひTANTOTEMPOにお越しになってご覧ください。
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萩原義弘さんの写真展"SNOWY III"のトークショーを開催しました。

東日本大震災の影響でいろいろなイベントが中止または自粛ムードになっているのですが、萩原さんは「やろうよ、やろう」と神戸に来てくださいました。

都内に住む萩原さんは余震で揺れまくっていると話されていましたが、神戸のほとんど揺れない環境にほっとしている様子もありました。

トークショーは僕が司会でスライドショーをコントロールしながら、萩原さんにお話しいただく形式で行いました。

まず、萩原さんの写真体験の最初のきっかけについて尋ねました。いわゆるグラフ誌が世界の様子や写真のおもしろさをまざまざと見せつける時代だったことが写真に触れるきっかけだったこと、さらに写真がまだ生き生きと新鮮だったころに大学で写真を学ぶことになった体験を話されました。さらに、写真を学ぶ過程で体験した一つの偶然、一つの事件がその後の写真家としての基本的な姿勢や作品制作の方向性を決めていったことが紹介されました。その事件が、夕張で90人あまりがなくなった1981年の炭鉱事故で、たまたまその近くに居合わせその地を訪れてうけた衝撃が炭坑の暮らしや人々に視線を向かわせるきっかけになったことが説明されました。

その後、国内の石炭価格が上昇し、エネルギー資源が石油にシフトしていく中、炭坑が廃れ閉じられていくのを目の当たりにしながら、夕張だけではなく全国の閉山した炭坑や鉱山を撮影してまわりそれが大きな幹となるシリーズ「巨幹残栄」となり、高い評価を受ける経過が語られました。

ドキュメンタリーの写真の力量はおのずその被写体と自分との関係性によるし、いかに事実を写し出すものであっても、その写真がひとのこころに届くためには美しくなくてはならない、との持論を力強く話しておられたのが印象的でした。この考えに基づいて新たな幹として撮影されたのがSNOWYのシリーズです。廃坑や閉山した鉱山を「廃墟」と呼ぶことをかたくなに拒むのは、まさにそれらの「遺物」がまだ生きていて、ただ崩壊を続けているにすぎないのだ、という萩原さんですが、その説明にはとても説得力があります。そこに雪というモチーフを持ち込んで、崩壊に寄り添う言語としてこれを用い、崩壊の過程がよりはっきりと示されるよう強く美しい光の陰影を写し取っていく制作のプロセスがあるわけで、オリジナルで真似のできないリスクの上に描かれているからこそ優れた作品になるのだと思います。

危険をおかして撮影に出かけ、ほんの数カットを撮影するために雪原を往復するなかに、作品を制作するこころの活動の真摯さと情熱があります。この態度こそ、若い、作家を目指す方々にはぜひ見習ってほしい、とトークショーを締めくくりました。

トークショー後はレセプションパーティーを開催、萩原さんを囲んでひとの輪ができ、カレーやオリジナルのSNOWYというお菓子で来廊者の方にお過ごしいただきました。トークショー当日に作品が2つも販売されるなど、萩原さんにとっても本当にうれしい反響だったと思います。

作品を作る、売るという行為の責任という点で、萩原さんはプリントの美しさにも常に配慮しており、すべてに責任を負うことが写真家の仕事なのだ、と繰り返されていました。まさにその通り、いいトークショーだったと思います。
R0010696.jpg萩原義弘さんの"SNOWY III"が始まりました。

今日は萩原さんも在廊され、2年前の展覧会から現在までのそれぞれの活動と成長と話し合いました。

2年前、TANTOTEMPOはまだ生まれたばかりの幼いギャラリーで、萩原さんに直接メールで展覧会をお願いし、受け入れてくださったところからTANTOTEMPOのギャラリーとしての方向性が決まったといってもいいほど、"SNOWY"の展覧会はすばらしい反響がありました。一方、萩原さんは"SNOWY"の世界観が幾重にも重なるような厚みを作ること、またドキュメンタリーでありながらアートとして解釈しうるお手本のような作品制作、さらには造形としてのSNOWYとストーリーとしてのSNOWYを見事に両立させての東川賞の受賞と、まさに円熟の凄みを見せてくれる今回の"SNOWY III"です。

僕たちが正統派の写真を一義に取り上げているのは、まさにこの一点に尽きるのです。誰が見ても美しい、誰が見てもわかりやすい、その作品の価値が人類の普遍的な考えによって体系づけられ解釈されるもっとも基本的なスタイル。写真の写真たる本質に向き合い、おごらず、媚びず、きわめて上品に写真という構造に寄り添う、そういう考えで制作された作品群だと思います。

今回はRCペーパーに大伸ばしにされた迫力のある銀塩作品も持ってきてくださり、ギャラリーでひときわ輝いています。

萩原義弘さんの"SNOWY III"。ぜひTANTOTEMPOでご覧ください。
R0010571.jpg【写真:販売されたオリジナルプリントにサインをする細江英公さん】

TANTOTEMPOで現在開催中の細江英公さん「花泥棒」の展覧会のトークショーのため、2月5日細江英公さんが神戸に来られました。

「花泥棒」のシリーズは鴨居羊子さんの制作した人形を細江さんが撮影した1966年の作品で、長らく眠っていたシリーズとのことでしたが、あることを契機に発掘され、再プリント、写真集出版に至った経緯があります。

細江英公さんはこの写真展のために神戸を訪れてくださり、精力的に様々なイベントに登場してくださりました。

R0010589.jpg【トークショーはカフェ部分で満員の中行われる】

5日午後に新神戸駅から直接TANTOTEMPOに到着された午後3時には、TANTOTEMPOはトークショーに参加される方々や写真展を見に来られた方でいっぱいでした。トークショーは午後4時からカフェ部分を使用して開催され、まず細江さんが前回神戸を訪れた1995年の大震災当時の様子をお話しになりました。また、震災の被害を補うために世界中の優れた写真家700人に声をかけ、写真作品の提供を呼びかけ、オークションで得たお金を神戸の災害義援金に充てた当時の活動について語ってくださいました。

また、花泥棒のシリーズの撮影について、1966年当時鴨居羊子さんから依頼され鴨居さん私家版の作品集「ミスペテン」のための撮影であったこと、また人形をつれて様々な場所で撮影するうちにまるでひとを撮っているような気がして、いたずらな人形たちを様々なポーズで自由に撮影したことなどを語ってくださいました。「花泥棒」というタイトルは、そういういたずらな雰囲気を示すのに最も適した言葉だった、とのことです。薔薇刑のシリーズを撮影した三島由紀夫氏との思い出話には参加者皆さんが目を輝かせて聞き入っていたのが印象的でした。


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【トークショー後のレセプションの風景・瞬く間にひとの輪が】

トークショーの後は簡単なレセプションを行い、細江さんを囲んでひとの輪ができていました。写真絵本「花泥棒」のサイン本もたくさん販売され、またすでに皆さんが持っておられる細江さんの写真集にサインを求めるトークショー参加者の姿もありました。細江さんは柔和な笑顔で応じておられました。





TANTOTEMPOが細江英公さんに写真展開催をお願いした後、昨年10月に大変うれしいニュースが飛び込んできました。様々な文化芸術活動について、これまでも叙勲をされるなど高い評価を得てこられたのですが、今回は文化功労者に選出されたのです。TANTOTEMPOではせっかく神戸に来ていただくのであれば何かお祝いができないか検討し、「お祝い神戸の会」を開催することが決まりました。細江さんも大変喜んでいただいてお受けくださいました。


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【会場に入場する細江英公氏と山田代表】

2月5日午後7時から神戸オリエンタルホテルバンブールームで開催された「細江英公文化功労者お祝い神戸の会」は、神戸市の代表、写真展を共催することとなった神戸ファッション美術館、細江さんにゆかりのある写真家や細江さんのファン、三島由紀夫に関連する著述家で元NYTimes東京支局長などを歴任されたヘンリー・スコット・ストークスさん、関西を中心とした文化やメディアの担い手、ギャラリーの皆さん、TANTOTEMPOの友人関係者の皆さんが集まってくださいました。また今回の写真展で作品を購入してくださった方がたはご招待としてご参加いただきました。





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【開会の言葉を述べる山田代表】

まず、細江さんがTANTOTEMPOの山田代表と腕組みをして入場されました。ホテルでこんな盛大な祝賀会とは考えてなかったなぁ、タキシードで来るんだった、と照れてお話しになっておられましたが、存在感は本当に大きく、堂々とした入場でした。その後山田の開会の挨拶の後、神戸市の市民参画推進局の岸田さまから乾杯のご発声をいただきました。

お食事は着座でしたがビュッフェスタイル。乾杯の後はお食事タイムとなりそれぞれのテーブルで、また席を移動しながら自然に交流の輪ができていました。実はテーブルには仕掛けがあり、テーブル名が「花泥棒」「薔薇刑」「抱擁」など、細江さんのシリーズ名となっており大変好評だったと思います。我ながらいいアイデアでした。他に「おかあさんのばか」や「鎌鼬」「おとこと女」のテーブルもあり、皆さんに受けていたと思います。また、会場に設置されている巨大なスクリーン上に細江作品やご略歴を紹介するムービーを流しながらの宴会となりました。


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【三島由紀夫氏のエピソードを述べるHenry Stokesさん】

一旦皆さんに着席いただいて、お祝辞をいただきました。Henryさんは以前にもTANTOTEMPOに来てくださったことのある方で、日本の戦後、特に三島由起夫氏とのご交遊があり、著作「三島由紀夫、生と死」の本文中に薔薇刑の撮影に関連する細江英公さんと三島由紀夫の交流についての記述があります。欧米での細江作品の根強い人気について、薔薇刑の三島由紀夫のイメージが無断で使用されるほどだ、とユーモアを交え半ば真剣に話されていたのが印象的でした。





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【清里フォトミュージアムに作品が収蔵されている西山武志、北義昭両写真家の表敬の挨拶】

その後ファッション美術館の関係者、清里フォトミュージアムに作品が収蔵されている若い写真家たちが清里の館長である細江英公さんにお祝いのメッセージを伝えておられました。さらにTANTOTEMPOが今後手がけていく予定の偉大なアーティストの考え方をアーカイブし若い世代の想像力を啓発するプロジェクトに細江さんの監修をいただけるよう、プロジェクトを動かす大学生たちの表敬と花束贈呈、さらに関西のアートやメディアの担い手からのお祝辞、参加者の皆さんのじゃんけん大会を通じてささやかなプレゼントもありました。そして参加者全員を代表してTANTOTEMPO山田から記念品の贈呈をさせていただきました。細江英公さんは始終笑顔で参列者の皆さんと交流をもたれておられました。良き祝賀会だったと喜んでいただけたのが何よりでした。




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【講演会場のオルビスホールは250名超える観客が集まった】

2月6日は朝食をともにし、その後神戸の街並をご覧になりたいというのでドライブをしました。細江さんは震災当時神戸に入られたときの様子を非常によく記憶されていて、復興した街をご覧になり見事に復活した様子に驚いておられました。一方で、震災復興住宅の存在など、脇浜地区から六甲アイランドの様子をご覧になって、復興にかかった大変な努力とその規模や住宅の大きさに静かに見入っておられました。




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【展示作品を前にする細江氏】

六甲アイランドの神戸ファッション美術館では、まず細江英公写真展「ファインダーから視た肉体」の会場である4Fのギャラリーを訪れました。すでにたくさんの写真愛好家がギャラリーで作品を見ていらっしゃる中、細江さんも一つ一つ作品を確かめながらご覧になっておられました。

講演会は、5Fオルビスホールで開催され、本当にたくさんの聴衆が集まってくださいました。中には外国の方々の参加者もあり、国際的に認知されている細江さんならではの講演会だったと思います。


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【大スクリーンに映し出される細江作品と細江英公氏】

講演会では、薔薇刑に始まって現在に至るまでの作品の数々がスライドショーで紹介され、それぞれのイメージに関する記憶と作品に対する思いなどが紹介されました。特に「薔薇刑」の三島由紀夫氏、「鎌鼬」の土方巽氏、「胡蝶の夢」の大野一雄氏など、それぞれの被写体と自身の関係性にこそ写真に命を吹き込む要素があるのだ、写真芸術とは関係性の芸術だ、との持論を展開されておられました。予定を大幅に越える講演会となり参加者の盛大な拍手で終了しました。

その後はお疲れになったご様子もなく、新幹線で東京にお帰りになり、2日間の神戸の旅は終わりました。


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【細江さんに花束を手渡す甲南大学写真部の井上さんと鶴田さん】

細江英公さんが神戸に来てくださったことの意味について、僕自身もいろいろと考えてみました。そろそろ大きなひとと組んだ方がいい、それだけのことができるギャラリーだ、とある方から特別にご紹介いただいて今回の展覧会になったこと、またそれを発展的にファッション美術館に働きかけて展覧会・講演会が実現し、文化功労者選出を受けて祝賀会とつながっていったこと、またそれに関わって協力いただいた方々のご尽力、すべてが結集しての神戸だったのではないかと思っています。僕自身、写真のおもしろさに触れてなお感じる最近の写真のあり方に対する反発やつまらなさ、ギャラリーの苦しい経営という観点でみても、これほどの大きな存在の写真家の写真展を開催できたことはTANTOTEMPOにとっても財産です。また、細江さんの写真作品について、予想を遥かに超える数を世に送り出せたことも、また国際的な認知が進んで海外の写真家やギャラリーから驚きのメッセージが届いている現状などを考えると、細江英公というお名前と実体の大きさは計り知れないものがあるのだと実感します。一方で、写真とはいったい何なのか、写真という芸術が170年という歴史の中でたどってきた変化や表現のある種のうつろいに驚くばかりです。被写体との関係性の芸術である、という細江さんのお考えは、つまるところ美学の表出を両者のバランスが描き出しているとも読み取れる訳です。最近の表現は、被写体が見えなかったり、被写体の力に負けていたり、自分本位な考えに終始する表現、直近の賞や人気にただ習う表現、また写真というものの本質を全く考慮しない作風など、表現者はあらゆることに不勉強で無頓着ともいえ、そのことが写真の存在を危うくしているのです。何か新しいことをしているつもりになっているけれども、何も新しいことなんてしていない、みんなかつて誰かがやっていた同じようなことをさほど追求もせずに繰り返しているだけ、写真表現に流行などが持ち込まれている平坦さはなんとかならないものか。カメラを初めて買ったような写真に関わり始めた人たちを集めて写真を教えることが産業となり、その人たちをコンテストやレビューに誘導することがまた産業化し、カメラメーカーと写真教室とエンドユーザーが結びついてたこつぼ構造化しているのが現在の写真界隈の一局面。日本はまだまだカメラ王国、写真王国ではない、表現の自由には触れることはないにせよ、これは細江さんの言葉でもあるのです。写真の未来にはこれからも広大な地平が約束されていると僕自身も確信していますが、やはり教育や政治など、写真や芸術にもポジティブな社会の参加が必要だと痛感します。その意味で、細江英公さんや他の優れた日本の写真家の高い業績から学ぶことが何より大切なのではないかと実感する今回の講演会でした。


IMG_8739.jpg【ルナ・ロッサの作品展示を見入る細江さん】

最後に、今回の2つの写真展開催、祝賀会開催に多大なるご協力いただきました細江英公さんのご子息細江賢治さま、冬青社高橋国博さま、神戸ファッション美術館百々徹学芸員さま、久保利さま、中瀬さま、祝賀会のお手伝いをいただいた白石尚子さま、木村勝一さま、火置浩一さま、Henry Scott Stokesさま、Henryさまをおつれくださった笠野泰照さま、乾杯のご発声をくださいました神戸市市民参画推進室岸田さまにこの場をお借りして感謝の意を表したいと思います。本当にありがとうございました。また、お忙しい中トークショー、パーティーにご参加・ご参列くださった皆さま、作品をご購入くださった素敵な皆さまに、こころより感謝申し上げます。TANTOTEMPOのスタッフの田邉、宮原、西山各氏にも感謝いたします。

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