11日の日曜日朝に無事南仏から帰ってきました。2日間ぼけていますが、今日こそは書かねばなりませんし、眠らなければなりません。



アルルの町をあるいていると、この写真フェスティバルでは様々な仕掛けで写真に関わる人をとり込もうとしていることがわかります。これらの枠組みには、A.コンセプトに基づいた写真展覧会、B.招待国であるアルゼンチンの写真家やアーティストの写真展、アート展、C.LUMAという芸術振興財団による新しいコンテンポラリー寄りの表現のコンテストや写真の歴史本の表彰、D.著名なコレクターのコレクションを一堂に集めた展覧会、E.ある特有の被写体を対象とした著名写真家の展覧会、F.若手写真家を紹介展などがあげられ、これにフォトフォリオレビューとワークショップ、そして夜のセッションが積み上げられて構成されていきます。今年この枠組みには6つのテーマが与えられていました。ひとつはHigh Society Photoと題した、いわゆる富裕層の写真の露出です。富裕層は元来写真好きで、ポラロイドや35mm判カメラを用いて自宅に招いたゲストなどのプライベートフォトを撮影していたわけですから、それらが露出されて面白くないわけがありません。それがレイトショーで暴露されるといった内容です。
【写真右:ミック・ジャガーが今回特別に許可したとされる自身の写真を撮影したシリーズ】
また、ロックを撮影した写真家が紹介され
、現在まで最も撮影されたアーティストとしてミック・ジャガーが取り上げられていました。その他、パティ・スミスなどのモデルとそれを撮影したメープルソープのように、ロックアーティストと写真家、ロックアーティスト自身が写真家として活動をするなどといった1980年代当時もっとも進んでいた前衛的なアートとしての"Rock"が恐ろしく整然と取り上げられていました。実はこの"Rock"のコンセプト、ディレクターのエベル氏がアルルに関わり始めた2年後の1987年に一度アルルのテーマとして取り上げられたそうです。それがものすごく写真界に影響を与えたとエベルさんは語っていて、その理由としてロックがそのものずばり"avant-garde"であったこと、そしてパンクなどいっさいの禁じ手がロックにはなかったためだと説明されていました。実際、放尿のシーンや性器の露出、ドラッグなど、本来整然としていたはずの被写体と撮影者の関わりはそのときに破壊され、堰を切ったように新しい表現が生まれてきたのだ、とのことです。この説明には大変説得力がありました。その"Rock"が回顧され再び取り上げられているのです。まさにHeavy Duty and Razor Sharpです。
【写真:エルンスト・ハースの展示】
その他、フィルムフォトグラフィを象徴するいくつかのカラー作品が、Ernst Haasを中心に紹介されるなど、フィルム写真文化へオマージュとして展開されていました。また、ドキュメンタリーも質の高い展示とプレゼンテーションが行われており、2005年のイラン大統領選挙で勝利した強硬な反政府組織弾圧を繰り広げるアフマニネジャド氏の大統領就任からイラン入りし、反政府組織のグリーンパーティーを取材、盛り上がる2009年の大統領選で26歳の女性がイスラム革命防衛隊によって射殺された事件をめぐって市民ジャーナリズムがイランの地で勃興しネットを利用して広く情報が世界を駆け巡ったことに触れ、市民ジャーナリズムの新しさと危うさを提示することに成功したフランス人写真家Paolo Woods氏の作品展も独立展として質の高い展示がなされていました。
アルルは中心となる旧市街と、その周辺に作られた新しい町があり、当然旧市街が写真フェスティバルの舞台となっています。古代ローマ時代に建てられた古代劇場や円形劇場、その周囲に複雑にめぐらされたふるい家屋と狭い通路。そんな中を歩くだけでも面白いのですが、多くの写真展が本当に古い大聖堂や居宅、修道院、教会、廃墟や倉庫跡などを利用して行われています。総予算5億円、その50%が国と地方政府、アルル市の予算拠出、25%が入場料収入と企業協賛金、グッズ販売、フォトフォ
リオ参加費などであてられ、驚くべきことに残りの25%が個人の寄付によるのだそうです。税金対策もあるのでしょうが、この数字は実に驚くべきことだと思います。個人のコレクターとしても大変名高いフランスの映画プロデューサであるMarin Karmitz氏は、Antoine d'Agata氏や杉本博司氏の作品を所蔵、なんとEditionが1という個人仕様の作品なども所蔵しているようで、なんとも桁違いな豪華さでした。
次回は日本の写真家のレビューの様子を記します。
