この会は、もともと甲南大学の写真部の学生さんたちがTANTOTEMPOの写真展を観覧に来られた際に、少し声をかけて写真部の学生の写真アートに対する認識について尋ねてみたところ、写真の理解につながるアートの理解が難しいとの発言があったことから提案した企画です。将来的には学生の中から代表を決め、兵庫県下の参加を希望するあらゆる写真部を有する大学に声をかけて、この読み取り会を発展的に拡張する計画で、さらにいくつかのプロジェクトを提案する企画としていくことを提案しています。
初めての会ということもあり、最初は皆さんとても緊張されていたと思いますが、会の趣旨や方向性を説明する中で、日本の社会の不具合は社会参加するものと社会参加をしないものとの分断にも一つの原因があるのではないか、皆が少しずつ力を出し合って社会をよくする方向に向けていくしかないと説き、学生が自主的にプロジェクトを構成していくよう促すことを伝えると、皆さん輝いた目で互いを見合って意気高揚していく様子でした。
会では、まず僕を含めて皆がどのような美術教育を受けて来たかを尋ねてみました。この問いには、すべての学生が全くと言っていいほど美術教育を受けていないことがわかりました。次に、どうして世の中に「アート」というものが出現したのか、アートが評価され価値体系の中に組み込まれていった経過、写真の歴史、写真の評価など、誰か合理的な説明ができないか?と尋ねてみました。これらはギャラリー活動を導いてはいるが美術の基礎教育もろくに受けていない僕にも単純には説明不可能なことですし、学生の皆さんにも難しい質問です。そこで、これらの項目について皆がどのような認識を持っているのかをもとに、どのような教育があればこれらのことに答えられるようになるか尋ねてみました。案の定、ほとんどの人は推定的にしか説明はできないけれど、それらのことを知りたいという意欲があり何らかの教育があればこれらの質問にも答えられるようになるかもしれないし、そういうことが理解できるようになることが生きていくことの価値を高めると考えていることがわかりました。学生の皆さんがどうしてこれらのことに答えられないのかについて、パリのルーブルやオルセーなどの世界に名高い美術館に遠足でやってくるフランスの子供たちの教育環境、アルル国際写真祭が多くの高校生や中学生のアート教育に利用されている現状をもとに話してみました。私たちが、いわゆるインフラのない美術教育を受けているのといかに違うかについて説明してみました。これらの説明で、やはり何らかの美術の理解を深める機会があれば美術やアートの基本的な考えが身に付く可能性があるということが理解されたと思います。
次に、どのような「機会」を「誰」に対して「いつ」提供するのがいいのか、僕なりの考えを伝えてみました。学生たちは将来写真家を目ざすことはなく、全員今後普通に就職活動をすすめて社会に旅立つ方ばかりです。その点は、写真専門学校や芸大の学生とは一線を画せる訳です。そこで、彼らには作品を制作側としてではなく、いわゆる観覧者や批評、エンドユーザや消費者、教育や学術という立場でアートを見つめてもらい、アートを理解するのに役立つ程度のいい教材を特に高校生向きに作成することを提案してみました。その要点は以下の通りです。
- 一校一テーマ、各テーマにファシリテータを設定する
- 夏休み、春休みを利用して、大学代表数名が全体的なスケジュールのもと一流の写真家やアーティスト、美術家、評論家、学者などにインタビューする
- 写真展やアート展の大きなものに赴き、内部から取材に応じてもらう
- テーマは、アートの歴史、アートの価値と流通、アートを読み取る、世界を変えたアート、社会とアート、前衛、アートと言論、コミュニケーションとメディアなどで構成し、それぞれに長けたファシリテータを用意し、事前に設問などを協議し、インタビューを収録する
- インタビューした内容を学園祭などで発表することを本活動の趣旨とし、そのためにビデオを教材ビデオを編集、上映会を開催し、一般観覧者、高校教育の美術教育現場をみている先生を招待し評価を求める
- 評価が高い教材は採用とし、評価が低いと再編集するか再取材するか検討する
- 編集映像をテーマごとに分類し、10−20巻の全集形式のDVD集にまとめ、まず県下の20の圏域の第一次一般高校に美術教材として無償配布する。20の圏域の第一次一般高校はそれぞれDVD集の10コピーを同じ圏域の高校に配布、すみずみまで行き渡るよう配布プログラムを構成する
- 配布が全国に行き渡った段階で、英語バージョン、また小学生、中学生向きのバージョンを作成する。これらはYouTubeなどに掲載し、万人に観覧してもらえるようにする
こんな流れになるかと思います。すでに細江英公氏や複数の写真家、ギャラリーや美術館、教育機関などに協力を要請し了解を得ていることを伝えると、大きな歓声が沸き上がりました。また、口頭でこれらの計画を話したところ、ファシリテータとして名乗りを上げてくださるアートの担い手、教育者もでてきており、神戸・関西から世界中に発信できる教材を目指して活動を行うことについて、学生の皆さんの感想を聞いてみました。すると、もう皆なんともいえない誇らしい顔つきになって、キラキラ上気した表情で興奮しているのがわかりました。
次回の会は年明けに第2回の会を開催し、会の名前を決めたり、写真集を特にスナップ系の写真の読み解き会を行い、活動のスケジュールなどを話し合います。近くHPやメイリングリストを作りアップします。
これらのプロジェクトに興味を持っていただけるかたでファシリテータになってくださるアートの担い手(ギャラリスト、キュレータ、学芸員、大学アート系教員、高校写真部顧問など)を随時募集しています。また、予算やメディアで協力をいただける方のご連絡をお願いいたします。
なお、会の様子は見学可能です。事前にご連絡をお願いいたします。

保坂です。
参加。
#僕も写真とアートについては独学しました。