2010年7月アーカイブ

R0011981.jpg7月24日、Carlos Jurado写真展が始まりました。Carlosはメキシコ人の写真家ですが、スペインと日本で写真教育を受け、現在東京在住です。

イメージは、とても静かな風景写真で、海岸線や雪原を主としたモノクロの写真です。長時間露光が醸し出す水面の鏡面や雲の動きのあるイメージですが、大変美しいイメージです。今回展示に使用したプリントはインクジェット作品です。

23日から神戸入りし、展示と食事会、昨日の25日にはトークショーを開催しました。非常に静かな人柄ながら写真に関する熱意は高く、また日本語が在日年数が6年程度であるのに堪能です。日本語で書籍が読めるとの話にみんな驚いていましたが、もともと音楽を志していたものがいつしか写真家になるという変化について、話していただきました。音楽と写真アートの共通性、写真に含まれるコンチェルトのような響きや静寂について、自身の考えを語ってくれました。特に、スライドショーには日本人の音楽家による雅楽を許諾を得て使用しており、自身のイメージに如何にマッチして見えるかを示していました。

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Carlosはもともと大阪の日本写真映像専門学校の出身で、外務省の海外アーティストへの奨学金制度を利用して留学されたとのこと、TANTOTEMPOへはOffice AURACROSSという浅田政志さんなど写真家のマネージメント・ギャラリー運営をされている前田龍央さんからの勧めもあって知り合いました。イメージについては、競争率の大変高いステディーな風景のモノクロ。例えば、マイケル・ケナなどと共通するイメージかと思います。その点についてもトークショーではあえて話題にしましたが、Carlosの場合は直接Kennaに会いにいき、「自分のイメージは似ていると思うか?」と問いかけたとのことです。Kennaは即座に「ちがう、君のイメージは模倣ではないしいい写真なので続けるべきだ」と答えたとのことです。グレイスケールの使う幅や緻密さはKennaと全く違うことは見ればわかると思っています。

Carlosは8月に日本を離れメキシコに帰国することになっています。写真展が終了する頃にはメキシコに戻っている、という何とも不思議なタイミングですが、いろいろ忙しい中を準備していただいたようですので、無事の帰国とメキシコでの活躍をお祈りしていようと思っています。日本に自由に出入りできるアーティストビザの取得にも成功したみたいですので、またいつでも戻ってくるよ、と昨日食事の後神戸の喧噪の中に消えていったCarlosでした。
R0014437.jpgTANTOTEMPOでは、アルル国際写真フェスティバルに参加して得られた知見の報告会を下記要領で開催します。報告会では、今回一緒に参加していただいた甲南女子大学教授・馬場伸彦氏にもご参加いただき、「アルル、写真の出会い」と題された巨大な写真の枠組みについてスライドショーを用いて概説するほか、南仏の旅をムービーでご紹介します。





開催日時:2010年7月30日(金)午後7時30分
場所:北野 イタリアンレストラン ヴァンヴィーノ(078-232-7377
参加費:¥3,000(食事代のみ、飲み物別途)
募集:お申し込み先着15名様
内容:
アルルと写真(仮題/スライドショー/馬場伸彦)
アルル写真フェスティバルに関するレポート(仮題/スライドショー/TANTOTEMPO杉山)
Tour de Provence(ムービー/TANTOTEMPO杉山)

お問い合わせ・お申し込みは
078-393-0810
info@tantotempo.jp
まで。

若い写真家、海外での写真活動に興味のある方にご参加いただければと考えています。
南仏の旅に興味のある方もお楽しみいただけると思います。

ぜひご参加ください。
R0015031.jpgDaniel Machado写真展が7月18日無事終了しました。

17日にはDanielのギャラリートークがありました。トークではまず出身のウルグアイの地図が紹介され、国家について紹介がありました。続いて写真活動のきっかけとなったウルグアイの刑務所の説明があり、その中でウルグアイの政治や経済の動向から刑務所がたどった変遷が説明されました。すべての監房が独房だったことや、この刑務所がそもそもイギリスの刑務所のコピーとして建造された背景には、ウルグアイが欧米をモデルに、いろいろな意味で平和で豊かであったことを示しています。それが、特に大きな理由もなく衰退し、力を失っていったという説明がありました。基幹となる産業や、資源開発が遅れたなどの理由があったとのことです。現在のウルグアイは、経済的にも政治的にも苦しい状況だとの説明がありました。

Machado氏の別のシリーズである病院のシリーズでは、現役の国立大学病院が撮影されています。現できであるにも関わらず老朽化に任せたまま使用されていて、ペンキがはがれた壁や汚れたトイレなど、悪い環境と言わざるを得ない施設です。Danielはその実態を暴くシリーズを隠しカメラで作成したそうです。その結果、当局から睨まれたことは言うに及びませんが、少しだけ病院の環境が整えられたことが紹介されました。ドキュメンタリーの手法は、時にこのような社会的な反応があるものだということがよくわかると思います。

作品販売は残念ながら数多くという訳にはいかず2枚にとどまりました。しかし、写真のドキュメンタリー性とアートという考え方からすると、TANTOTEMPOとしてはこれらの作品こそ価値があると思っています。TANTOTEMPOでは引き続きDaniel Machado氏の写真作品を取り扱っていきます。

Danielは作品の設置からトークショーの準備に至るまで、きめの細やかな配慮をみせる熱心さがありました。ギャラリーに訪れてくださった来廊者の方々にも積極的に声をかけていたのが印象的です。現在スペインなどでも写真活動をされているようですので、今後の活躍を期待したいと思います。
R0011296.jpg【写真上:フェスティバルのメイン会場】

11日の日曜日朝に無事南仏から帰ってきました。2日間ぼけていますが、今日こそは書かねばなりませんし、眠らなければなりません。

アルルの町をあるいていると、この写真フェスティバルでは様々な仕掛けで写真に関わる人をとり込もうとしていることがわかります。これらの枠組みには、A.コンセプトに基づいた写真展覧会、B.招待国であるアルゼンチンの写真家やアーティストの写真展、アート展、C.LUMAという芸術振興財団による新しいコンテンポラリー寄りの表現のコンテストや写真の歴史本の表彰、D.著名なコレクターのコレクションを一堂に集めた展覧会、E.ある特有の被写体を対象とした著名写真家の展覧会、F.若手写真家を紹介展などがあげられ、これにフォトフォリオレビューとワークショップ、そして夜のセッションが積み上げられて構成されていきます。今年この枠組みには6つのテーマが与えられていました。ひとつはHigh Society Photoと題した、いわゆる富裕層の写真の露出です。富裕層は元来写真好きで、ポラロイドや35mm判カメラを用いて自宅に招いたゲストなどのプライベートフォトを撮影していたわけですから、それらが露出されて面白くないわけがありません。それがレイトショーで暴露されるといった内容です。

【写真右:ミック・ジャガーが今回特別に許可したとされる自身の写真を撮影したシリーズ】

また、ロックを撮影した写真家が紹介され
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、現在まで最も撮影されたアーティストとしてミック・ジャガーが取り上げられていました。その他、パティ・スミスなどのモデルとそれを撮影したメープルソープのように、ロックアーティストと写真家、ロックアーティスト自身が写真家として活動をするなどといった1980年代当時もっとも進んでいた前衛的なアートとしての"Rock"が恐ろしく整然と取り上げられていました。実はこの"Rock"のコンセプト、ディレクターのエベル氏がアルルに関わり始めた2年後の1987年に一度アルルのテーマとして取り上げられたそうです。それがものすごく写真界に影響を与えたとエベルさんは語っていて、その理由としてロックがそのものずばり"avant-garde"であったこと、そしてパンクなどいっさいの禁じ手がロックにはなかったためだと説明されていました。実際、放尿のシーンや性器の露出、ドラッグなど、本来整然としていたはずの被写体と撮影者の関わりはそのときに破壊され、堰を切ったように新しい表現が生まれてきたのだ、とのことです。この説明には大変説得力がありました。その"Rock"が回顧され再び取り上げられているのです。まさにHeavy Duty and Razor Sharpです。

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【写真:エルンスト・ハースの展示】

その他、フィルムフォトグラフィを象徴するいくつかのカラー作品が、Ernst Haasを中心に紹介されるなど、フィルム写真文化へオマージュとして展開されていました。また、ドキュメンタリーも質の高い展示とプレゼンテーションが行われており、2005年のイラン大統領選挙で勝利した強硬な反政府組織弾圧を繰り広げるアフマニネジャド氏の大統領就任からイラン入りし、反政府組織のグリーンパーティーを取材、盛り上がる2009年の大統領選で26歳の女性がイスラム革命防衛隊によって射殺された事件をめぐって市民ジャーナリズムがイランの地で勃興しネットを利用して広く情報が世界を駆け巡ったことに触れ、市民ジャーナリズムの新しさと危うさを提示することに成功したフランス人写真家Paolo Woods氏の作品展も独立展として質の高い展示がなされていました。



アルルは中心となる旧市街と、その周辺に作られた新しい町があり、当然旧市街が写真フェスティバルの舞台となっています。古代ローマ時代に建てられた古代劇場や円形劇場、その周囲に複雑にめぐらされたふるい家屋と狭い通路。そんな中を歩くだけでも面白いのですが、多くの写真展が本当に古い大聖堂や居宅、修道院、教会、廃墟や倉庫跡などを利用して行われています。総予算5億円、その50%が国と地方政府、アルル市の予算拠出、25%が入場料収入と企業協賛金、グッズ販売、フォトフォ
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リオ参加費などであてられ、驚くべきことに残りの25%が個人の寄付によるのだそうです。税金対策もあるのでしょうが、この数字は実に驚くべきことだと思います。個人のコレクターとしても大変名高いフランスの映画プロデューサであるMarin Karmitz氏は、Antoine d'Agata氏や杉本博司氏の作品を所蔵、なんとEditionが1という個人仕様の作品なども所蔵しているようで、なんとも桁違いな豪華さでした。


次回は日本の写真家のレビューの様子を記します。



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7月5日、マルセイユからレンタカーでの2時間足らずのドライブでアルルに到着しました。途中のドライブルートは高速道路A7からA54に乗り継ぐもので、基本的に道路はよく整備されていて快適なドライブでした。

ヨーロッパは連日猛暑で、気温が40度を超える快晴の毎日です。

アルルには午前中に到着し、ホテルにテェックイン後、旧市街の駐車場に車をとめ、ドクトルアントン通の事務局に向かいました。ここでは、僕は夜のイベント以外はほぼすべての会場にアクセス権のあるプレスパスを、同行者のTANTOTEMPO代表と甲南女子大学の馬場先生は有料だけれどすべての会場にアクセスできるプロパスを受け取りました。僕はもともとギャラリスト登録ですが、アルルの枠組みの総合ディレクターへのインタビューを申し込んでいたため、ジャーナリストとしての登録をしてもらうことができました。【写真上:今年のキーイメージ「赤いサイ」が施されたパスカード】

TANTOTEMPOがアルルに参加した目的は3つあります。ひとつは、写真に関連した教育活動の取材、大きな写真イベントの予算規模と会場編成の調査、そしてレビューの質の調査と写真家との出会いです。

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【写真:レビュー会場となっていた古い建築物をモダンに改装した建物】

当然のことながら、大変多くの情報を直接主催者から得ることができました。インタビューに答えてくださったアルルの総合ディレクター、フランソワ・エベル氏は、取材に際しビデオによる取材も許可してくれました。聞きたいことには何でも応える、という姿勢だったと思います。おかげで予算規模、予算編成、教育、日本の写真の印象など、多くのリアルな情報にアクセスできたのではないかと思います。これはいずれまとめて公開しようと思っています。

さて、「アルル・写真の出会い2010」と直訳されるアルル国際写真フェスティバルですが、大変大きな規模のイベントです。事務局、公式写真展会場、イベント会場を含めると、全部で30を超える会場があり、それがアルル市内2km四方に分散しているのです。また、一部の会場はアルル郊外の修道院に設置されていました。さらに、プレミアムウィークと称された7月3日からの2週間は、特に最初の数日、連日古代劇場-Theatre Antiqueで夜のイベントが開催されるなど、まさにお祭り騒ぎです。そしてそのお祭りに多くの写真家が集い、自らの作った作品をたくさんのプロフェッショナルなレビュアに問いかけるフォトフォリオレビューで成り立っているのがこのイベントです。

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【写真:レビュー会場でレビューを待つ人々】

日本の写真家も、ざっと見かけただけで15名程度、実際にインタビューを取れた方は8名に上りました。そのうち4名の方はフォトフォリオレビューの現場を許諾を得て取材させていただくことができました。それぞれにすばらしい写真を撮られていて、実際にポルトガルのギャラリーに呼ばれて作品展をオファーされた写真家もいます。一方で、大変優れた作品を制作されているのに十分な成果を上げられなかった写真家もおられました。レビューの質は大変高く、レビュアーは決して曖昧な結論を伝えることはない様子だったと思います。むしろ、どうしてその作家が評価されないのか、丁寧に伝えようとしていた印象を受けました。そして、それがそれぞれの作家に納得のいく説明になっているところがレビュアとしての適格性・資質を示しているのだと思います。それぞれの写真家は、皆ではないにせよ日本でもレビューなどを受けた経験があるのですが、日本では多くの場合写真家がレビューを担当し納得できる理由を示されることは少ない、と語っていました。欧米では高い評価を受けているのに、日本では写真展の可能性や写真集出版の可能性につながっていくことはほとんどないとのことでした。

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【写真:教会を展示場とした展示風景】

全体を通して日本の写真活動の紹介は全くといってありませんでした。唯一、LUMAという芸術振興NPO財団が選出した写真家に日本人が選ばれていましたが、写真集の展示に至るまで日本の出版社の日本人の作品に触れる機会はほとんどありませんでした。日本人がレビューを受けにくるのは決して少ない訳ではないのに、です。この理由も写真を巡る欧米のシステムの違いに照らしていけば簡単に説明が可能です。ドイツの出版社の説明によると、やはり写真は外に向いた表現でないと評価を受けにくい、といいます。志賀理江子などの写真集も強くて好きだが、内面的だ、扱いが難しい、と説明されていました。現代の日本国内で高く評価されている写真家や写真活動がほとんど紹介されていない事実は、やはりきちんと分析すべきだと思います。中国や韓国などの他のアジア諸国は、フランソワ・エベル氏によると、かなりの勢いでマーケットを確立しつつあると言います。それに伴い、取り上げられる写真家も多くなってきているのです。

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【写真:Theatre Antique-古代劇場にて午後10時から開催されたアルル公式ステートメントの発表を待つ人々】

今回のイベントのコンセプトは"HEAVY DUTY AND RAZOR SHARP"というものでした。直訳すると、「重労働とカミソリのような鋭さ」ということになると思います。このコンセプトで作られた写真展はどれも本当にすばらしいものでした。世界の一流の、あるいはいずれ次の世代を担っていくだろう若手の写真展は、どれも安易に作られたものはなく、自分の脚で稼ぎ創意工夫で作品のレベルまで作り上げられたものばかりです。作品の展示やプレゼンテーション全体にまでとてつもない趣向が凝らされ、工夫がなされ、そこを訪れた一般の方に驚きを与え写真ファンを増やすあらゆる試みがなされていました。展示会場となる古い建築物もどれもすばらしく、その建築物の特徴を生かす空間デザインがなされ、町中が有機的につながっているかのようでした。アルルは町中写真にあふれかえって、ものすごい数の観光客、写真ファンでにぎわっているのです。

次回は総合ディレクター、エベル氏のインタビュー内容についてまとめてみます。ぜひお楽しみに。
IMG_Arles.jpg©LES RENCONTRES ARLES PHOTOGRAPHIE

TANTOTEMPOでは、僕と代表の二人と甲南女子大学馬場氏とで7月3日より渡欧し、アルル国際写真フェスティバルを訪問、取材・見学をしてきます。

アルルは世界で最も古い写真の祭典といわれており、世界各国から写真家が訪れPhotofolio Reviewを受けにきています。また、世界中のギャラリーや教育機関が集い写真イベントを開催している他、街の周辺でも様々な写真イベントが開催されています。

例年多くの日本人がこの地を訪れポートフォリオレビューを受けていると聞きます。この地でレビューを受ける、あるいはレビューをすることにどのような意味があるのか、そのシステムを含めて関係者からインタビューをとってこようと思っています。もちろん、参加者の写真を見せていただく他、可能であれば現地にて各国の若い写真家の作品をレビューして、写真の傾向を読み解くほか、可能性の感じられる写真家がいれば日本に呼びたいと思います。

また、僕としては神戸や関西でつくることのできる身近な写真フェスティバルを構想していて、東京ではできないコンパクトで低予算ながら行政のからんだ写真の枠組みを模索しています。そのあたりもアルルで見てこようと思っています。アルル写真際はすでに41回をかぞえる歴史ある枠組みであり、イベントに行政が大きな予算を落としています。ローマ時代につくられた古い街として町おこし的な構想もあるのかもしれませんが、やはり文化予算の意味を市民が良く理解しているのだと思います。日本の都市では同じ感覚では絶対にイベントは開催できません。

アルルには7月5日から8日まで滞在します。アルルに参加される方で現地でお目にかかれそうな方は、ぜひご一報ください。info@tantotempo.jpあてにメールをお願いいたします。

アルルの他にはマルセイユ、エクスアンプロバンス、ムスティエ・セント・マリーなどの町を訪れることにしています。

レポートはできるだけ多くこちらのブログにて紹介いたします。ぜひお楽しみに。

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