Twitterでは簡単に報告を出したのですが、恒例の写真展終了時のイベントの報告について、正式なものがまだだったので記します。
今回の写真展はTANTOTEMPOが提案する「写真を飾る生活」をもとにギャラリー内にリビングルームを再現し、作品の展示を行う写真展です。若手写真家を発掘し育てるというTANTOTEMPO pureという枠組みに若手写真家の参加を促し、ギャラリー内でいろいろな形で紹介するというプロジェクトも含むイベントと位置づけています。
昨年も同様の写真展を開催しましたが、若手写真家の参加する写真の枠組みとしてもっとも難しいのはある程度のレベルを保ちながら持続的に積極的な関わりがもてるか、という点につきます。実際写真活動が途絶えたり全く連絡が取れなくなる写真家が出現するなどもあったため、夏の終わり頃から新規の写真家を募集して臨みました。
結果としてたくさんの写真プリントのセールスを記録することができました。9作家、延べ36作品が販売されました。もちろん、こういうイベントにはいわゆる身内が買い上げていく販売があるため一概には言えませんが、しかし昨年を大きく上回る販売でした。
販売数が増えたのは、非常に強力なイメージを持って名古屋から参加されたCojuさんのご活躍があったからです。Cojuさんはモノクロフィルムから起こしたデジタルデータをもとに極めて整ったperspectiveに構造を配置した静かで高品位なインクジェットモノクローム作品を豊富に持ってこられました。それに加え、全国から関わりのある方、神戸在住時の友人関係者など、展覧会前から積極的なアピールをされ、展覧会期間中も多くの時間を在廊され販売にまでつながるしっかりとしたセールストークを繰り返しておられました。また、額裝やプリントのみといった作品のプレゼンテーションも豊かで、とても買いやすい構成を考えてこられていました。強引な取引だとギャラリーとしても印象を悪くするだけですが、彼は逆に人柄で語りかけるようにトークをし売り上げていたのが印象的でした。Cojuさんの作品のそばには作品が売れたことを示す赤いマークが数多く並んだため、連鎖的に他の写真家の作品も販売された可能性があります。こういう写真展には、来廊された写真ファンに美術品としての写真を買って自宅に飾るということをイメージさせるだけでも大きな意義があるのです。
12月26日には写真家が集まってのトークショーが開催されました。写真界に限らず日本の政治や経済、社会全体が閉塞する状況にあって、どのように写真活動を行えばいいのかを考えるのは大変です。特に若い世代の写真家は新しい表現を模索するかオーソドックスな手法を追求するか、どこかの時点で何らかの選択を迫られていると思います。ギャラリーという活動単位についても、僕たちは常に先人たちの後を着実に踏みながら歩いていく必要があるのですが、実際には後をついていきたくない状況も多々あります。つまり、目指している世界がどうも美しく見えない場合があるのです。とすると僕たち自身もまた誰かに追われたときに果たして正しい方向を向いて美しい背中でいられるのか大変疑問です。規範とするべきものを失ったとき、時代は混迷し進むべき方向を見失います。僕たちはまさにそんな時代に生きているのだと思います。そういう時代の逆風から最初に立ち上がるものがあるとすればそれはアートだと思っています。時代が混乱すればするほど、目標を失ったひとが増えれば増えるほど、表現は数多く立ち上がります。それらが少しずつ立ち上げっては打たれ、立ち上げっては打たれしてアートは地固めを果たしていきます。それを僕は若い世代の写真家に求めたいと思っています。大きな美しい背中が見えない時代だからこそ、誰よりも先に立ち上がり迷いながらでも流れを作っていって欲しいと思います。そして、表現者として誠実に作品を作ってもらいたいと思います。そうすればその背中は追いかけたいほど美しくなると信じています。
また、現在我々が組み込まれている写真システムについて、僕は疑ってかかるよう参加者や写真家に説明しました。アート教育の平坦な日本において、写真のことを知る一般のひとがほとんどいない現状がどのようにして生まれたのか、当然だと誰もが信じているアートの写真を巡る現状について、あえて問いかけていく必要があると説明しました。写真の権威付けと実体、カメラメーカの写真イベントへの関与、カメラの販売攻勢と表現者を名乗る写真家のおびただしい増加、様々なイベントが無秩序に立ち上がっていく様子など、新しい表現とオーソドックスな表現との力学、写真を巡る経済・政治力学についても着目する必要があることを説明しました。最後に、写真教育をできるだけ低学年から始める仕組みについて提案を行いました。写真美術館などでの現場教育について、小学校や中学校からの現場教育がアートの裾野を広げるために大切なことなのだとの意見を表明しました。
TANTOTEMPO pure写真展も2回目、写真を生活空間にもたらすほんの小さなきっかけを作っているにすぎませんが、枠組みをもう少し工夫しさらに発展するよう来年も開催していこうと思っています。TANTOTEMPO pureをどうぞこれからもよろしくお願いいたします。
