馬場伸彦さんギャラリートーク

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R0010640.jpg神戸は未明から新型インフルエンザの感染報道、またそれに関連する各種イベントの中止という未曾有の事態に遭遇しました。神戸祭りなどの大型のイベントが中止され、学校の休校が決まるなど、季節性インフルエンザと比較して有意に感染率、致死性が高いかという問題に対して科学的evidenceがそれを否定しているにもかかわらず、既定の対策として行政側の判断が働きました。これは現在の判断としてはやむを得ないと思います。

一方で、今回のような弱毒性インフルエンザでも海外で死亡例が多数報告されている事態を考えると、その影響は決して看過できないため、TANTOTEMPOとしても今日のイベントである馬場伸彦さんのギャラリートークの開催が妥当かどうか対応を考えざるを得ませんでした。

ただ、既に一部の来廊者の方がギャラリーに向かってくださっているということを受けて、来廊者の皆さんにマスクを配布するというギャラリーとして最低限行いうる対策をとった上で、最終的にイベント開催を決定しました。多くの方がギャラリーに足を運んでくださり、結果として大変質の高いギャラリートークとなったと思います。

R0010652.jpgのサムネール画像
馬場伸彦さんは甲南女子大学文学部メディア表現学科の教授です。氏は教壇に立つ傍ら多くの著作を執筆され、また写真活動も行っています。写真に関する氏の造詣は深く、独特の視点から写真を解釈されています。

ギャラリートークでは、このイベントのために特別ご用意いただいたスライドショーが紹介されました。まず、ルイ・ジャック・マンデ・ダゲールによって発明された写真表現手法であるダゲレオタイプが紹介され、氏の所蔵する実物が紹介されました。ダゲレオタイプに多くみられる被写体としての死した子供の肖像写真があることに触れ、写真が記憶の手段として肖像画に取って代わった経緯について説明がなされました。次にザンダー(August Sander: 1876-1964)の写真が紹介され、写真の写実性、演出性、写真から派生する類型学について解説がありました。

R0010673.jpg
続いて日本の原信三のゴム版写真の紹介、これらのむしろ絵画に近い手法に対して堀野正雄らがモンタージュや多重露光などの方法論、モチーフにアートの由来を求める撮影法などが紹介されました。

ウィトキン、マリオAの肉体とその解体、再構成といった絵画では表現し得ない深みのある写真表現、フレンドランダーのセルフポートレイトでも自らの影や鏡像を写真に写し込むことで明確に写真世界に作家自身が参加するというアイデアなどの説明がありました。

1時間半という非常に長いギャラリートークでしたが、聴衆も次々と紹介される質の高いスライドショーに馬場さんの軽妙なトークを身じろぎせず聞き入っていました。写真世界が深遠で多様な解釈を持ちうる世界であること、特にビンテージプリント、オリジナルプリントの文化的価値についてお話しされ、トークを締めくくられました。

TANTOTEMPOでは今回のような教養を深める写真イベントを今後も開催していくつもりです。少なくとも、日本には一般へのアート写真教育がなく、これが写真をアートとして生活に取り入れようとする人びとの育成を阻んでいる一因となっていると思います。アート教育を徹底して現場主義で行っている欧米と違い、日本では画一的な教科書教育が今でも続いています。とすると、このような写真に関する教養を深めるイベントはとても大事だと考えられます。

今後もTANTOTEMPOの写真イベントのご注目いただきたいと思っています。





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