DSC00484.jpg12月10日から開催してまいりましたTANTOTEMPO pure展が終了しました。

この写真展は若手の写真家にレビューを通して展示の機会をもっていただき、また来廊者の方々にも作品を飾る生活の楽しさを訴えようとTANTOTEMPO設立の2008年から毎年開催しているもので、今年も家具を設置しての展覧会となりました。

最近は展覧会の始まる前にその展覧会が成功するかどうか不安になり胃が痛くなることが多いのですが、「成功」の定義はともかく、終わってみれば来廊者数も反応や売り上げもそこそこ例年通りだったのではないかと安堵しています。今年のTANTOTEMPO pure展は海外から3写真家を招待して大作品のユーモラスな作品やコンセプトの明快な作品、展示の工夫をするなどいろいろな点で作品が社会に訴える仕組みを見せられたかと思います。参加した写真家また来廊いただいた皆さんからも例年以上に好評で、大変有意義な展覧会だったと思います。一方で、作品が大きくなる傾向があり、また高レベルになったために価格帯が例年より少し上昇したこともあり、昨今の経済的状況で売り上げが生まれるのか大変心配していましたが、どうやら杞憂に終わったようです。決してすばらしい成果とはいえませんが、近年の経済状況、作品のレベルなどからすれば上出来と言えるのではないかと思います。

DSC00529.jpg
それにしても今年の日本の若手写真家は、よく頑張ってくださった方とそうでない方とが成果の上ではっきりと分かれる結果となりました。いわゆる営業的なことを強いるのは僕たちギャラリーの立場からすればこころ苦しい訳ですが、自ら率先して作品を世に出したいと願いそれを行動で示す姿勢があった日本の写真家の3名はぎりぎりのところで結果を残せたのが良かったと思います。彼らとは展覧会が進むにつれ一体感が生じて、彼ら同士がつながっていくのを大変興味深く見ていました。ギャラリーにこられない外国勢の作品の解説を引き受けてくれるすばらしい姿勢の写真家もおられました。

最も売れたのは海外の一人と日本人の一人の各2イメージ延べ3作品ずつ。それぞれ作品力、アートや社会への参加の姿勢が他を一歩抜きん出ていたように思います。特に海外の写真家で一番人気だったDavid Schalliolさんの作品と日本人写真家の清家政人さんの作品について少し解説したいと思います。

R0012421.jpg
Davidさんはアメリカの名門シカゴ大学の社会学部で準教のポジションにいる社会学者です。社会学での研究テーマが都市の境界線を読み取ることで、都市の辺縁に存在する孤立した建築物を都市の拡張と衰退の視点から眺め研究をしています。そのテーマがそのまま写真作品になっているのが今回の写真展で展示した風景写真なのです。イメージは非常に精緻で色彩が豊か、構図やライティングを捉える視点も完成度が高く、もちろん建築写真としてみてもうまい写真と言えます。来廊者の方の多くが彼の作品を最も理解しやすく欲しい作品、とたたえてくださったのが印象に残っています。展覧会後、一報を入れると大変喜んでくれました。

R0012428.jpg
清家さんは展示6作品のうち特に2作品に注目が集まりました。写真はDavidさんとは正反対、どちらかというと日本的な心証風景かと思います。日本画の異時同画法という、一つの画面に時空の異なる絵を落とし込んでいくという手法を写真で実現できないかと考えて、複雑な工程を作品づくりに課しての参加となりました。その結果、注目されたいくつかの作品には複雑な構図からもたらされる美が醸し出されており、作品としての意図を表わすことに成功したのではないかと思います。清家さんはまた、東京からの参加でしたが、設置から撤収まで非常に高い意識での参加姿勢があり、ギャラリーとしてもその辺りの姿勢を非常に高く評価しています。あとは作品の精度を上げて、注目された2作品と同レベルのわかりやすい美しさを制作姿勢から加えていけばかなり質の高い作家活動が繰り広げられるのではないかと思います。

DSC00504.jpg
他の日本人写真家2人も頑張りました。イメージはまだまだ実験段階、まだ伝えきれない部分もあるのだろうと思います。しかし、今回の展覧会の中でより多くのことを学ばれたと思います。アートに携わることの大変さは何も売り上げばかりで語ってはいけないのですが、グループ展の他の参加者の作品が売れていく様子を横目でみることは非常に苦しい思いがあるものです。しかし、めげずに最後まで熱心に自分の作品を売り上げていたことが何より結果につながったと思います。作品については他者のこころに響かない限り評価される所に到達できないことは明らかですので、作品をより高い姿勢で制作し、ギャラリーや来廊者と真摯な態度で交流し、フィードバックに耳を傾ける姿勢を持つことが何よりも大切です。彼らにはこれからも頑張っていただきたいと率直にエールを送りたいと思います。

実績としては2週間の期間中、12作品が販売されました。多くの方が来廊くださり、またこの展覧会の趣旨に賛同くださってたくさんの応援をいただきましたことを感謝しております。この場を借りて厚くお礼申し上げます。

R0012040.jpg【今年からPARIS PHOTOが開催されることになった新会場、Grand Palais】
11月9日から僕たちTANTOTEMPOスタッフはPARIS PHOTO 2011に行ってきました。PARIS PHOTOのレポートはすでに多くの人によりあちらこちらで書かれはじめているようですが、僕もこちらのブログとまた別の枠組みのコラムとに寄稿することにしていますので、こちらではあっさりと触れるに留めたいと思います。

僕自身が写真に関連してパリを訪問したのは3回目。2007年のTANTOTEMPOオープン前年、さらにTANTOTEMPO開設直後の2008年、この年は日本が特集された年だったわけですが、その2回に続いて3年ぶりの訪問となりました。前回の訪問は、パリはストライキが吹き荒れ、僕たちの帰国便が飛ばないという混乱に見舞われ滞在日程のほとんどをこの問題の解決に使ったため散々なパリ訪問でした。今回はあらゆる意味でさまざまに目的をもっての渡欧でしたので、ストで飛ばないような航空会社は避け少しゆとりのある日程を設定しての訪問でした。

R0017038.jpg
その訪問の大きなミッションの一つは、写真集や写真のZineなどをパリで調達する、というものでした。これは帰国直後の11月19日からTANTOTEMPOで開催した"WORLD INDIE PHOTO BOOK & ZINE COLLECTION"という写真集にフォーカスした企画に展示する写真集を集めるものです。PARIS PHOTO以外の写真イベントを訪問することも大きな目的でしたので、事前に調べていたさまざまなイベント訪問を実現してきました。特に、Offprint Parisという写真集、リトルプレス、Zineに多数の中小出版社や個人が参加するイベントでは本当にたくさんの写真集、ZIneを見ることができました。その熱気はPARIS PHOTO本体をしのぐのではないかというほどだったと思います。

R0012181.jpg
さて、"WORLD INDIE PHOTO BOOK & ZINE COLLECTION"ですが、6月にレビューサンタフェを取材訪問した際訪れたPHOTO-EYEというアメリカでも有数の写真ギャラリーに付属するBook StoreやIndie Photobook Libraryというこれら写真集の全世界に渡るデータベースを作成しようという試みで数多くの優れた写真集を目撃したことから企画したものです。写真集とはいえ、写真の見せ方や構成、装丁やデザインにおいて実にさまざまな工夫がなされており、いわゆる大手出版社によらない写真集の界隈がかなり階層の深いアートのコンテクストを持っているように見えた訳です。そこで、秋のパリ訪問にあわせて世界中から写真集を集めて、帰国直後に展覧会を構成できれば有意義な展示ができるのではないか、と考え計画をねってきたのです。

R0012180.jpg
"WORLD INDIE PHOTO BOOK & ZINE COLLECTION"では、アメリカは先述のPHOTO-EYE Book Storeから、欧州はOffprint Paris会場から任意に出版社や枠組みを設定して、また日本からはTANTOTEMPOにゆかりのある写真家や東京Photta-lot柿島貴志さんのセレクションを加えて、総数約80種類の写真集&Zineを展示しました。特にPHOTO-EYEはブックストアのMelanieディレクターが自ら写真集を直接セレクション、またOffprint会場でも枠組みそれぞれのおすすめ写真集の提案を受けての選抜となっており、これも展示が非常に面白い、と評判になったコレクションになった理由だと思います。

R0012158.jpg
【かなりしっかりした段ボール製のテーブルを設置】
企画の構想を立てた時点で一つの問題に突き当たりましたが、それが写真集をどのように展示するか、というものでした。しかし、ギャラリーによく来てくださる段ボールを使ったさまざまな商品開発を行う、自身も段ボールアートの可能性をさまざまに発信されている方にテーブル作成を依頼しました。このテーブルは壁に固定さえすれば相当の重さまで耐えるし、たたんでしまえば保存できますので非常に重宝しそうです。

結果的に、非常に面白い展示空間ができあがりました。写真集はそれぞれの枠組みごとに並べ、枠組みの紹介パネル、価格などとともに展示をしました。

R0012331.jpg
パリで出会ったいくつかの出版社、枠組みは非常に面白い写真集を作っています。写真集に留まらず自らリトルプレス、Zine屋と称してブランドを立ち上げている人も数多く見かけました。"WORLD INDIE PHOTO BOOK & ZINE COLLECTION"はまさにOffprint Paris会場のミニチュア版をTANTOTEMPOに設置したような形となりました。

内訳は、オランダをベースとするPolly's Picture Showという写真に関することなら何でもする、という写真プラットフォーム、スイスのリトルプレスKodoji Press、オランダ人だけれどブラジル在住の個人Zineレーベル4478Zineを立ち上げた写真家Erik、ロンドンのリトルプレスJane&Jeremy、そしてPHOTO-EYE Book StoreにTANTOTEMPO、Photta-lot
セレクションの日本のシリーズです。TANTOTEMPOが2月に開催する海外でも人気の硬派な写真誌ASPHALTも予告もかねて展示をしました。さらに、大阪のZine専門店Books DANTALIONも、オーナーディレクターの堺さんのセレクションで展覧会にご参加いただきました。

R0012350.jpg
さて、この展覧会中非常に面白い現象がみられました。来廊者の方々のギャラリー空間への滞在時間が非常に長いのです。写真集というものは、いわゆる写真展に飾られている写真とは全く違った興味を与えていることがわかります。アートの装置が一面的でも2次元でもない、装丁や本としての体裁の与え方など非常に多くのチェックポイントがあるからです。実際、何人かの来廊者の方は「適当な写真展を眺めるよりよほど面白い」「こんなに多様な写真集文化があるとは知らなかった」と非常に高く評価していただいたと思います。

【馬場先生の話に熱心に聞き入る窪山さん(手前)と堺さん】
12月3日、このイベントに関するトークショーを開催しました。甲南女子大学のメディア文化、写真論の馬場伸彦先生、Zineを専門に扱う書店Books DANTALIONの堺達朗さん、そして大阪の写真ギャラリーBLOOM GALLERYの窪山洋子さんを招いてのトークショーでは、まず馬場先生から写真集がいつ頃立ち上がり、どのような歴史を経て発達したのかを概説していただき、現在の写真集の存在意義について、また写真集という物質的構造そのものが触ってめくるものとしていわゆるデジタル写真集としてモニターで見る写真集構造とちがってパーソナルな体験をもたらすことを、DTPの登場による印刷に関する技術革新とからめて説明していただきました。続いてZineについて堺達朗さんにその発祥と考えられるいくつかのエピソードを話していただき、Zineがどうして注目され現在の形態と流通を持つに至ったかを説明していただきました。Zineは本質的に非常に安易にチープに作られていて、いわゆる写真集の品位とは全く異なる形式である訳ですが、デジタル時代にあってもこうしたチープさが維持されながら、一方では著名作家のZineの登場、イベントの興隆で本来チープであるはずのものが高額に取引される作品として流通する事情などを説明していただきました。さらに、海外や日本でのZineのイベントをスライドショーで紹介していただき世界中でのZine熱を紹介していただきました。続いて、写真ギャラリーの立場からすれば写真展という非常にフォーマルな構造があるなか、全国でも珍しいポートフォリオ展、Zine展などを相次いで開催し人気の展覧会に育てているBLOOM GALLERYの窪山さんに、そういったイベントを開催するきっかけや意図について話していただきました。ポートフォリオやZineには、限られた写真を選んで展示する写真展とは違って、より多くの作品を見ることができるため作家の世界観が見えやすい、という特徴がある、それが面白いとの説明がありました。参加者の多くは写真表現を学んでいる途上の方が多く、皆さんが熱心に聞き入っておられたいいトークショーだったと思います。

R0017033.jpg
【オランダの若い女性アーティスト集団にインタビューを申し込む】
今回の写真集展は、異なった国、地域から多くの写真集を集めたこと、またそれぞれの枠組みや出版社が独自の形式の写真集を送り出していること、また一冊一冊がアート作品のような面白い表情を見せている装丁やデザインそのものの多様性を見ることができた訳で、多くの方が大変楽しまれ非常に高く評価された展覧会となりました。また、参加していただいたアメリカやヨーロッパの枠組みそのものにもFacebookやホームページで取り上げてもらったため、彼ら自身やその周辺からも高い評価をもらうことができたように思います。

TANTOTEMPOには世界中の写真集を収集したそこそこ大きなライブラリーがありますが、今回の写真集はそれらとは全く異なる顔を持っているように感じられました。これらは写真から必然的に派生した写真集と、そもそも自己表現のツール、メディアとして難しいこと抜きに自然発生したZineと、明らかに出所が異なるようにも思えるし、馬場先生が「それらの区別には意味はない、結局のところは複製技術、印刷技術、編集のセンスが時代と組み合った結果でき上った文化なのだ」とのまとめの言葉に象徴される、アートの一部なのだと考えるしかないと思います。TANTOTEMPOでは今後もこのようなイベントの開催ができるよう、アメリカやパリで作った関係を維持しながら、より大きなイベントを模索したいと思います。
R0011637_2.jpg【写真:金箔を用いて制作された作品を前に説明する大和田さん】
大変好評な大和田良さんの写真展"FORM"がいよいよ最終週となっています。

"FORM"は、盆栽を撮影した大和田さんの新作シリーズですが、盆栽の特徴や歴史を伝えるためにさまざまな工夫をしており、大和田さんらしい美的なセンスが光る作品となっています。

10月29日、大和田さんが神戸に来られトークショーを開催しました。トークショーでは盆栽のシリーズを撮影するに至った経緯がスライドショーで紹介され、日本の美、日本的な芸術を作品として描くことが最初の目的だった、と説明されました。さまざまな伝統美があるなかで盆栽というモチーフを選び撮影対象としたこと、さらに盆栽を描くために参考にした俵屋宗達や尾形光琳など、琳派の絵師によるふすま絵などを紹介され、これらが作品作りに大きな影響を与えた、と話されました。

R0011641.jpg
スライドショーでは、初期の試験的な撮影をするなかで、従来の対象にまっすぐに向き合う方法論では盆栽そのものの構造を十分に伝えられない、盆栽の力に負けてしまう、との思いを抱き苦悩したことが紹介されました。その上で、どのような表現であれば盆栽と対等に向き合いながら美を描けるのかを追求したということです。最終的に、さまざまな季節のいろいろな時間帯の光を利用して数多くのカットを撮影し、それらを一つのイメージの中にコラージュの手法で配置することで美しい作品が作り上げられていった、と話しておられました。盆栽が数百年という時間を経て次の世代に引き継がれいく時間の長さを伝えるために、あらゆる時間軸上の陰影を作品に織り込んでいった、という説明には非常に説得力がありました。

R0011665.jpg
スナップ写真の一時性、即時性という対極にある写真の手法についてまずトークの導入部分で話され、そのあとで今回の作品づくりについて説明をされたのは非常に効果的でした。写真をあらゆる視点で拡張すること。アートとはつまるところ新しい視点や概念を創造することでもある訳で、その意味で大和田さんの盆栽は多くの可能性を示すものです。新しい美の拡張を訴える作品がつまらない訳はなく、またデザイン的にただ分割して並べ直しただけのものではない、悠久の時間という概念を作品の織り込むことを目的として異なった時間、季節に撮影した写真を同一のイメージに配置した今回の手法は、見事に実を結んだと言えます。

トークショー後のレセプションでは参加者の皆さんと大和田さんが作品を前に熱心に話されておられました。また、たくさんの作品が販売されました。

TANTOTEMPOでの大和田さんの"FORM"は11月6日までです。ぜひお越しになり作品をご覧いただきたいと思います。
R0011360.jpg
大和田良さんのFORM-SCENERY SEEN THROUGH BONSAIが好評です。

盆栽を独特の美意識の上で撮影したシリーズ、大和田さんらしい大胆なセグメンテーションや切り返しが盆栽の特徴である枝振りや全体の構造に劇的な陰影を生み出しており、また光の捉え方に非常に細やかな配慮が見え、美しい作品に仕上がっています。

東洋の伝統芸術に対して写真という西洋的で現代的な手法がどのようにアプローチするのか、いろいろ話題にもなったし、大変苦労をされた作品だと思いますが、最終的には盆栽の魅力を余すところなく見せており、写真そのものの従来の方法論をあっさりと打ち破っているところで写真に新しい境地を切り開いており、大変ユニークな作品となっています。額装やプリントの処理もすばらしく、すでに複数作品が販売されています。

特に大作品はいわゆる盆栽でいうところの寄せ植えを非常に高精細に、また自由な発想で異なった調子の光を巧みに組み合わせて隅々まで丁寧に制作されており、圧巻です。

大和田良さんは昨年に続いて2回目の神戸となります。昨年ワークショップでトークショーをお願いした際、数点の作品を展示しましたが、トークショーではちょうど盆栽のシリーズの撮影に取りかかったところで今年はその成果を見せていただいています。すばらしい作品ですのでぜひTANTOTEMPOでご覧ください。展覧会は11月6日(日)までです。

また、29日(土)にはトークショーがあります。午後4時からまだ若干空きがありますのでお申し込みをお願いいたします。先着40名さま、¥2,000です。

DSC00422.jpg8月27日から開催中の岡部東京さんの写真展、"ヨッシーワールド"が大変好評です。連日たくさんの来廊者があり、岡部さんの写真の世界に驚かれ、にぎやかに笑いが広がって、皆さん楽しまれている様子です。一方で、一部の写真ファンからは批判もあるようで、岡部さんが神妙な表情で耳を傾けるシーンなどもありました。賛否両論の中、展覧会は会期を1週間残すだけとなっています。




DSC00424.jpg
2008年キャノン写真新世紀で入選されてからあまり活動という活動のなかった岡部さんですが、埋もれている写真家を再発掘し世に問いかけようとTANTOTEMPOが声をかけて実現した写真展です。普通なら笑ってスルーしてしまうところを、やはりそのエンターテイメント性と写真制作までの細やかなプロセスに可能性を感じてのメインギャラリーでの個展に発展した企画です。面白ければ何をやってもいい、というのではつまらない展覧会になったでしょうが、岡部さんの作品はものすごく時間をかけて手作業で制作した"舞台"を撮影することで、まるでコラージュのように幾重にも人物を立体的に重ねており、その作業自体がとても楽しく見えるのです。また、今回は作品の魅力をいろいろな見せ方で問いかけられるよう、アクリル作品と額装作品、さらには"舞台"そのものを展示しています。作品がいかに細やかな手作業の上に成り立っているかを見ていただいており、これが人々をうならせている理由です。

9月17日(土)午後4時から岡部東京ギャラリートークも開催します。
参加無料、お申し込み不要ですので、どうぞお誘い合わせの上お越し下さいますようお願いいたします。
ohwada1.jpg
ⓒRYO OHWADA

写真家 大和田良さんの写真展、"FORM-SCENERY SEEN THROUGH BONSAI"展を開催します。

このシリーズは国内外で高い評価を受けている写真家、大和田良さんが東洋の伝統美として人気の高い盆栽をテーマに撮影したシリーズで、今年5月から7月までさいたま市大宮盆栽美術館にて開催され大変好評だったものです。現在東京新宿のB GALLERYと広尾EMON PHOTO GALLERYとで同時開催されている展覧会ですが、10月8日(土)から11月6日(日)まで、TANTOTEMPOにて開催します。 

盆栽という東洋の伝統芸術は、自然とそれに対峙するひととの対話によって成り立つとされ、長い歴史をもち、国内だけでなく海外にも根強いファンがいらっしゃいます。大和田良さんは盆栽の個性や価値を形作る技術、論理と向き合い、写真の手法を丁寧に絡めながら、盆栽の存在理由をこの"FORM"のシリーズで明らかにしています。 大和田さんがどのようにして古来受け継がれてきた東洋的伝統美に対して西洋的美の手法である写真でアプローチするのか、ぜひTANTOTEMPOでご覧ください。非常に美しい作品となっています。

また、この展覧会にあわせて10月29日(土)午後4時から大和田良トークショーを開催します。


FORM -SCENERY SEEN THROUGH BONSAI-
大和田良写真展
2011年10月8日(土) - 11月6日(日)
午前11時30分-午後7時
水・祝日定休

大和田良トークショー
2011年10月29日(土)午後4時から
参加費:¥2,000(レセプション付き)
参加お申し込み先着40名様
当日参加は受付できません。必ず事前にお申し込みをお願いいたします。
お申し込みは
event@tantotempo.jp
まで。
第2部はSanta Feの町の様子からレビューの実際について書いてみようと思います。

IMG_0052_2.jpg
【写真:Adobe風の建築】
6月2日は保坂さんもHALさんも僕も早くに起きて朝食をとり、Santa Feの町中を歩いたり、Photo Eye GalleryやBook Storeに出かけてみました。なんと言ってもレンタカーがあるので移動は楽です。adobeといわれるニューメキシコあたりの独特の作りの家々を見ながら町を歩くと、やはりここが全米第2位のアートの販売量を誇る町だということに改めて気づかされます。いたるところにギャラリーがあり、その多くが通りの両側にぎっしりと並んでいる一角があるなど、町の何処を歩いていても何らかのアート作品に巡り会います。また、たまたまですが、サンタフェの中心部でアクション映画の撮影をしていて、アメリカらしいというか、そのロケを観覧する客席まで用意されていました。俳優さんたち扮する警察官が記念撮影に臨む姿を撮影することができましたが、主役が誰でどんな内容の映画かはわかりませんでした。

DSC00177.jpg
【写真:PhotoEyeGalleryの内部】
Photo Eyeのギャラリーとブックストアは、そんな通りを少し走ると見えてきます。小さなスーパーや書店と隣接して、ギャラリーとブックストアが分かれて建っています。偉大な名前からは想像もできない小さな作りでしたが、写真のコレクションやWebを通じた写真家紹介、販売活動を行っているなど、世界的に影響力のある枠組みをもっているギャラリーです。Review Santa Feそのものに根ざした写真の活動もあり、6月2日にはニューメキシコ州立美術館でのオープニングレセプションのあと、Photo Eye Galleryでもレセプションが開かれていました。Book Storeも決して大きい訳ではありませんが、それでも世界中から写真集を集めており、むしろ大物の何処でも手に入る写真集というよりは、Indie Photo Bookといった手作り写真集、自費出版写真集などが所狭しと陳列されていたのが印象に残っています。

DSC00170.jpg
【写真:Photo Eye Book Store】
保坂さん、HALさんがReview Santa Fe主催すなわちCENTER主催のパーティーに参加されて僕も途中でで侵入、少しだけ盛り上がりを見せていただきました。また、その後Photo Eye Galleryでのレセプションにも参加させていただき、いろいろな写真家、レビュワーと話すことができました。これらのレセプションは欧米のワークショップやイベントでは当たり前のように開催されるもので、ここでは各写真家が各レビュワーと対話をすることでレビュワーのクセや考え方を探ることのできる、いわば前哨戦ともいえる場ともいえます。パーティーにはドキュメンタリー系のレビュワーとして参加された人権NGOのディレクターで日本人の山形さんなどがそれぞれに写真家と時間を過ごしている姿がありました。もちろん、保坂さんHALさんもいろいろな写真家やレビュワーと交流を持っていられました。

DSC00203.jpg
【写真:レビューを受ける保坂さん】
さて、Review Santa Feの第一日目のレビューが始まりました。Reviewは午前9時からはじまり、20分ごとに総入れ替えで行われる非常に慌ただしいものです。Review会場にはテーブルが40ほど並べられ、一つ一つのテーブルにレビュワーが陣取ります。早速保坂さんのレビューをテーブルサイドで取材しました。

保坂さんの写真はHDRで撮影した東京。非常にコンセプチュアルなイメージでクールなものです。新宿、歌舞伎町の雑多な看板や広告照明などが浮かび上がる尖ったモノクロのイメージです。保坂さんは結果的に大変高い評価を受けておられました。イメージの美しさもさることながら、もっとも人々の注目を集めたのは日本語の漢字や仮名の看板のテキスト、そして「ゴースト」ともいえる人々がうごめいている様子がHDR上でぶれて写る様子です。

さらに保坂さんはもう一つ決め文句を用意していました。つまり、3月11日の震災以降発生した電力供給制限により発生した東京都心部の抑制された照明です。「東京ではひょっとするともう二度と明るいこれらのイメージを作成できなくなるかもしれない」と。このひと言でレビュワーの皆さんの目の色が変わっていくのが見てとれました。レビュワーはギャラリーから美術館学芸員、アートコンサルタントと幅広く選択されていました。その多くが保坂さんに賞賛の言葉を投げかけていたのが印象的でした。

DSC00199.jpg
【写真:レビューを受けるHALさん】
一方のPHOTOGRAPHER HALさんは、その特異な名前、いでたちでReview開始前から大変注目されていました。また、カップルを撮影するそのイメージの鮮烈さ、さらには用意周到な戦略で他を圧倒する存在感を醸し出しておられたのが印象的でした。
HALさんは"CoupleJam"というバスタブ内で撮影した前作シリーズから、今回は"FreshLove"というカップルを真空パックに封じ込めた様子を撮影した作品で臨みました。また、レビューをビジネスチャンスへつなげるという直接的な訴求から、レビュワーをほぼギャラリストに限っていたところも保坂さんとは異なったアプローチでした。

HALさんはほぼすべてのギャラリストから絶賛され、非常に高く評価をされていました。その理由を考えてみたのですが、いくつかの要素が思い当たります。
まず、イメージの独自性の高さです。世界中何処を探しても見当たらない作品はこういったアートレビューでは非常に効果的です。アートレビューはいわゆる「異物」を探しているわけですから、普通でないもの、見たこともないものに対しては特に大きな門戸が開かれるのです。HALさんのイメージは「カップルの愛を新鮮に」というコンセプトと相まって、タイトル"Fresh(肉) Love"と、ラッピングされて新鮮に陳列されるカップルの像として映る訳で
面白くない訳がありません。HALさんは強い特異なイメージ、用意周到な戦略、そして誰よりも目立つことでSanta Feの風を見事に受けることに成功した訳です。

次はレビュワーのインタビューを通してみたアメリカの現代写真事情について書く予定です。


国際的にも評価の高い写真レビューイベント、Review Santa Fe 2011を取材することができたのでレポートします。

このレビューは毎年アメリカNew Mexico州Santa Feで開催される写真家のためのポートフォリオレビューで、全米から極めて高い写真の活動を行っている写真美術館学芸員、キュレーターやコンテンポラリーアート系美術館関係者、教育者、アートコンサル、ギャラリーなどが写真家をレビューし、評価の高い写真家には様々な写真活動が約束されるというものです。

このレビューの特徴は、誰もが参加できるレビューではあるがあらかじめセレクションがなされ事前に100名にしぼられること。また、原則としてレビューはクローズドで、評価の内容を他の人が知ることはできない仕組みになっています。一方で一般参加が可能なイベントも有しており、ファンドレイジング(資金集め)も含め様々な工夫で町や写真文化に根ざしていることがうかがえます。これらのイベントは強力なプロジェクトチームであるCENTERという組織が行っており、学生が参加しやすいよう6月の夏休み開始とともに開催されることもそうした工夫の一面と考えられます。

今年は6月2日の前夜祭から6月3日4日のレビュー本番、6月5日のレクチャーまで合計4日間のイベントです。僕自身はTANTOTEMPOでの立場を明かした上で著作のためのインタビューを申し込み、認められたため訪問することになりました。

DSC00151.jpg
【写真:広大なアメリカ大陸】僕がアメリカ本土を訪れたのは40年ぶり。幼少時シカゴで数年過ごした経験があり、サンフランシスコに乗り継ぎで到着したときは感慨ひとしおでした。40年の間にさまざまな変化がアメリカにも、僕自身にも起こっている訳で、出入国の厳格化なども目の当たりにすると複雑な気持ちでした。

さて、サンフランシスコでは乗り継ぎの関係で5時間あまり時間があったため、サンフランシスコ在住の写真家を訪問することになりました。

兼子裕代さんは3月の震災支援で立ち上げたTANTOTEMPOのSocio Arteの枠組みにいち早く反応し支援のためのプリントを送ってくださった写真家の一人です。彼女はもともと一般大学を出てカメラ雑誌などにライターとしてコラムを書く傍ら写真を撮影していたそうですが、サンフランシスコのArt Instituteへの留学を機にMFA(Master of Fine Art)の学位を取り、また作品が高く評価されたことからそのままサンフランシスコで写真家として活動を続けています。

01. Sentimental Education08.jpeg
【写真:Sentimental EducationからⓒHIROYO KANEKO】
兼子さんの作品は、個におけるさまざまな社会体験が社会においてのひとの人間形成や人間関係構築に寄与する、という構造を見せるもので、温泉で家族が入浴をするシーンを撮影したシリーズ"Sentimental Education"、日本の花見を通じて形成される人間関係をとらえた"Picnics"などがアメリカで高い評価を受けています。



picnics01.jpeg
【写真:PicnicsからⓒHIROYO KANEKO】
兼子さんの写真活動の拠点は、サンフランシスコにある複数のアーティストが入居するアパートをスタジオにリノベーションした建物で、その一室をスタジオとして使っています。大きな部屋ではありませんでしたが、作品のストックがあったり、額装や作品シリーズを考察するデスクがあり、非常にうらやましい環境でした。神戸にもスタジオハウスはありますが、アーティストの活動を支援する様々なグラント(資金援助)、スタジオなどアーティストの生活や作品制作環境の整備やそのための意識は欧米ほど高い訳ではありません。

DSC00146.jpg
【写真:兼子さんのスタジオのドアとアーティストたちがくつろぐスペース】
彼女をはじめ海外にその活動の本拠を求める写真家の中には、日本でのアートの活動が非常に窮屈で閉鎖的だとの思いを持たれている方が多いと思います。また、作品の評価が写真の歴史的な評価軸や時代や社会、マーケットの要求と呼応しながらなされ、写真の技術やセンスがあり努力がなされた写真家にはそれ相応のフィードバックがある、という当然のことが海外では実現する訳で、日本にはそういった構造がないことが直接的間接的に写真家の海外志向を助長しているともいえます。兼子さんのスタジオ訪問はそれらのことをまざまざと見せつけてくれる、大変有意義で興味深いものでした。



DSC00161.jpg
【写真:レビューに参加された保坂昇寿さん】サンフランシスコを出発しアルバカーキに到着する便が大幅に遅れ、結果的にアルバカーキに着いたのは午後11時。そこからレンタカーを予約してたので100kmの道のりを真っ暗な中一人でドライブして、午前12時半サンタフェに到着しました。サンタフェでは日本からレビューサンタフェに選ばれた保坂昇寿さんが待っていました。

今年のレビューサンタフェには2名の日本人写真家が選ばれていました。一人が保坂昇寿さん、そしてもう一人がPhotographerHALさんです。日本人の写真家のレビューの様子も特別に見せていただいたので後日レポートしますが、深夜にたどり着いたレビュー会場のホテルはまさに嵐の前の静けさ、ひっそりと静かで、保坂さんも眠りについておられたのを電話で起きてきてくださり、ロビーで落ち合いました。しかし、HALさんはまだ着いていませんでした。

部屋で休んでいた午前2時過ぎに保坂さんから連絡があり、HALさんが到着したことがわかりました。会いにいくと、なんと飛行機が大きく遅れ、空港に到着したときにはすでに他の交通機関が営業を終えていて、サンタフェに向かう他の搭乗客に乗せてもらってホテルまで送ってもらったといいます。HALさんとは2年前に東京でお目にかかったことがあり、久々の再会でしたが、物静かな人柄からは想像できない非常に力強く聡明な意思を持っておられる方だとの印象を受けました。これは後のレビューでも実感できたことです。

つづく
R0011106.jpg
【ムービーを見ながらレビューの様子を語るPhotographerHALさん】

先日レビューサンタフェ2011の報告会を開催しました。

これは僕自身が様々な写真やアートの枠組みのディレクターやレビュワー、参加者のインタビューを通して、現代のアートや写真が様々な国や社会の中でどのような位置づけにあるのかをアート教育を軸に見いだそうとする著作を書いている関係で、6月1日から6日までアメリカを訪れたものです。アメリカでも有数のレビューイベントを取材してきたので、7月9日夕方からTANTOTEMPOにて報告会を開催し、多くの方が参加してくださいました。

レビューはニューメキシコ州サンタフェのヒルトンホテルで開催され、6月2日の前夜祭から3日4日のレビュー、さらに5日のレクチャーと延べ4日にわたって開催されました。約500名の応募者の中からCENTERという運営組織のコミッティーが100名に絞り込んで、この100名がそれぞれ10名のレビュワーを選んでレビューを受ける、という方式です。レビュワーは、コンテンポラリーアート系の美術館、写真美術館の学芸員はじめ、全米から選ばれた一流の写真の担い手が担当。レビュー受ける写真家は、全米、ヨーロッパ、アジア、中東からの参加者で構成されており、日本からも保坂昇寿さん、PhotographerHALさんが参加されました。

レビューやインタビューの内容は、これから3回程度に分けてコラムとして書いていきますが、昨年アルル国際写真祭を取材した際と同様、事前にCENTERのトップであるLaura Presseleyさんに取材許可を取りほとんどのセッションの取材を行うことができました。また、直接保坂さんやHALさんのレビューの様子をビデオ撮影することも許可されたため、報告会はムービーを多用し、取材部分、プライベートムービーなどを織り交ぜて、スライドショーにて開催しました。

訪米の際、サンフランシスコ経由でサンタフェに向かったため、乗り継ぎの時間にサンフランシスコを訪問。サンフランシスコ空港のビル内を歩くムービーからプレゼンテーションが始まります。サンフランシスコでは一旦空港を離れ、兼子裕代さんという写真家のスタジオを訪れ、オフィスとして使用しているうらやましいほど整った制作現場としてのスタジオを見学した様子を、兼子さんの作品とともに参加者に紹介しました。また、ゲストとして参加されたベルギーで活躍されている井本礼子さんが海外に写真の活動をもとめるに至った経緯を話され、海外に写真の活動の本拠を求める写真家の気持ちなどを紹介されました。

レビューのセッションが始まり、保坂さん、HALさんのレビューが始まると、二人の評判が非常に高く驚かされた様子をレビューの光景を通じて説明を行いました。どうして日本人写真家の二人はアメリカで受けたのか。その理由を知ることは、戦略的にレビューに関わる手段を得ることだと思います。参加者の皆さんはこの報告会のためにTANTOTEMPOに来てくださった保坂さん、HALさんの生の意見にとても熱心に聴きいっておられました。強い作品を丁寧に作り上げることがなにより必要ですが、コミュニケーションのスキルを持つこと、受けそうなレビュワーを的確に選ぶこと、そしてやはりひととして触れ合うスキルを持つことがとても大切だと思います。また、HALさんのように既に実績のある写真家が明確な意志を持ってアメリカのマーケット開拓に乗り込む強い姿勢についても学ぶべきものがたくさんあることが示されたと思います。

R0011117.jpg
【レビュワーのアートの中での位置づけを紹介】

さらに、レビュワーのうち、シカゴの写真美術館のキュレーターのナターシャ・イーガンさんのインタビューを抜粋で紹介しました。シカゴのコロンビアカレッジというアート教育の最も高い位置にある学校の一つに附属するシカゴ写真美術館のプログラムや教育について、約15分のインタビューをとったものを編集し見ていただきました。また、レビューを受けにこられた写真家のうち、大変優れた活動をされていた3−4名の写真家にフォーカスし、特別に許可をもらってイメージを紹介しました。これらの中には将来TANTOTEMPOで紹介する可能性のある写真家もおられます。

続いて、写真やアートの教育がアメリカでどのような位置づけでなされているのか、レビューサンタフェの総合ディレクターであるCENTERのLaura Presseleyさんのインタビューを紹介しました。2005年にハーバードビジネススクールから発表された論文が紹介され、教育の中でいかにイマジネーションを豊かにするプログラムが大切かを説いており、美術教育がその最も近道である、という内容の論文の紹介がありました。「New MBA as MFA」つまり、「ビジネスの学位は、アートの学位に習え」というかなり衝撃的な内容です。アメリカでも想像力の欠如からコミュニケーションが取れなかったり、常軌を逸脱する考えが台頭することがあり、美術教育からこれらの欠点を克服しようとする動きがあるようです。日本が不況や政治不信に喘いでいる状況について、アート教育の不在を危惧する声は彼らからもあり「誘われればいつでも協力する用意がある」という思いもあるようです。先のナターシャさんや他のレビュワーなども、欧州や韓国、中国など海外のレビューには盛んに誘われるのに日本からはいっさい声がかからない、どうしてなんだ?と逆に質問を受ける場面もありました。これらの点は、報告会参加者も非常に衝撃を受けておられたと思います。


R0011101.jpg
【トークに参加された左から井本礼子さん、HALさん、保坂さん】

最後に、僕として考えた日本の写真への提言をまとめて紹介しました。日本の写真の中心地(国立写真美術館や研究・学究機関)を作ることや、写真やアートが"open to the public"であり続ける必要性、そしてMFAなどの学術的経験値をいかにアートに付加していくか、という観点からの教育へのてこ入れ、さらにはマーケット開拓の正統な方法としての幼少時からの美術教育の必要性についてお話ししました。

1時間半に渡る「ムービーとスライドショーで綴るレビュー・サンタフェ」ですが、参加者の皆さんが最後まで興味をもって見ていただいたと思います。現状の日本のアートは、その閉鎖性や安売りの問題、レビューを受けても評価すらまともに話せないレビューワーやビジネスにつながらない写真家レビュワーの適格性など、アートや写真の周辺には多くの問題がある訳で、これらの問題にはポジティブに解決に向かう意思が必要です。報告会に参加してくださった方がそれぞれの活動の中でこれらの問題について認識し、活動に反映されていくことを期待しています。

なお、この報告会で使用したムービーは新規編集したものを8月13日(土)以降、TANTOTEMPOエントランスのモニターでにて上映をする予定です。興味のある方はTANTOTEMPOまでお越し下さりぜひご覧ください。

先にも書きましたが、レビューサンタフェの詳細は、今後3回程度の記事にして報告する予定です。お楽しみに。
R0011100.jpg6月11日から開催していたオサム・ジェームス・ナカガワさんの写真展が終了しました。

アメリカ・インディアナ州、インディアナポリスのブルーミントンという町にあるインディアナ大学で教鞭をとる傍ら、家族や家族をモチーフにした作品、さらにはそこから発展して沖縄や戦争にテーマを求める強い写真を制作し発表するジェームスさんの"廻-Kai"ですが、11日のオープニングトークショーから終了まで、その壮絶なプリントの美しさで多くの方を魅了したと思います。

「家族」という非常にプライベートな写真、死にゆく父と新しい命の恵みという局面から紡がれていく誰もが巻き込まれる普遍的なドラマが鮮やかに描かれ、共感を呼ぶのです。このシリーズはジェームスさんの力量を世界に知らしめた代表作と言えます。

R0011052.jpg
インディアナ大学の准教授という立場から、今回の写真展では10名のアメリカの学生を日本のワークショップに連れてこられました。このワークショップは震災で開催が危ぶまれたものの、とても人気があるようで、いろいろ指導の背景をみていくと写真教育だけでなくさまざまな人間教育もなされていることがわかります。サンタフェでも2名の門下生がレビューを受けることのできる100名に選ばれていて、ジェームスの教育のレベルの高さを示していると思います。

折しも、僕自身がアート教育やマーケット形成に興味を持ってレビューサンタフェやその他の写真やアートの枠組みに参加し、アメリカの広大な写真世界を見てきたことから、ジェームスさんの活動の背景を知ることができましたが、トークショーでも、またその後に開催した日米の写真家を目指す学生の交流ワークショップでも、一貫してアート教育の重要性を示してくれたことは大変心強く思いました。系統的な教育法や現場教育が全くといっていいほどない日本のアート教育へのヒントは数知れず、これらをまとめていくことをわれわれ日本のアート界全体が考えないといけないと思います。

ジェームスさんは現在沖縄に滞在され、ガマのシリーズで作品を制作されておられます。日本を離れるまで精力的に写真活動を行われ、アメリカに戻られる予定です。今後は3月のヒューストンでの写真展などにも参加される予定ですので、僕も引き続き情報を共有しながら見ていようと思っています。

なお、TANTOTEMPOのSocio Arteの枠組みなどに共感されたジェームスさんの提案で、ジェームスさんやアメリカの有力写真家が参加する日米合同の写真チャリティーイベントが東京のP.G.I.とTANTOTEMPOで開催されます。
近く詳細を発表いたします。どうぞご参加くださいますようよろしくお願いいたします。

twitter

2011年12月

Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

アイテム

  • DSC00504.jpg
  • R0012428.jpg
  • R0012421.jpg
  • DSC00529.jpg
  • DSC00484.jpg
  • R0017033.jpg
  • R0012350.jpg
  • R0012181.jpg
  • R0012331.jpg
  • R0012158.jpg
Powered by Movable Type 4.1